詩人ってモテるの? 御徒町凧さん・谷郁雄さん・みちるさんに聞いてみた

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By 笠原名々子・nanako / 2022.06.20

 

ある詩人が、初対面の人に、「生きてる詩人なんているんだ」と言われたそうです。

それくらい、詩人というのは珍しい存在なのかもしれません。

わたしも出版社で働く前はそうでした。

 

でも今は詩人と会う機会も増えました。

彼らはときどき、大爆笑ではなくふふっと笑ってしまうような言葉をつぶやいたりします。

こういうところから詩が生まれるのかもしれません。

 

詩を書くとき以外、詩人は日常をどう生きているのか、もう少し知りたくなりました。

たとえば、聴いている音楽とか、1日のうち好きな時間帯とか。

 

いろいろ気になることはあるけれど、最初はちょっと変化球の質問がいいかなと、聞いてみたのが「詩人ってモテるの?」です。

詩人であるということは、それだけで人を惹きつけるのか。

それとも別に詩人であることは関係ないのか。

 

わたしの周りの3人の詩人に聞いてみました。

 

 

御徒町凧さんの回答 

 

うーん。なんとも答えづらい質問だけれども、個人差ありますよね。

モテる人は、職種に関わらずモテるだろうし、その逆もまた然りで…。

ただ個人的には、詩人はモテると思う。

なぜかというと詩を書くってとても感覚的なことだから、詩とずっと向き合ってるとセンスが磨かれる。

センスが良い人って魅力的でしょ? 

それと傾向として詩人は恋しやすい。熱しやすい。

その実は、ただ無邪気で我儘なだけかもしれないけど、情熱的な人は行動的だし、エネルギーの強い人って目立つから、恋愛する可能性は単純に増えるだろうし。

なので改めて、質問に簡潔に答えるなら、

詩人はモテる。ってことでw

けど、内向的な詩人も多いしなぁ…。

やっぱり分からなくなってきた。

ちなみに俺は、けっこうモテる方だと思う。

だけど詩を書く前(意識的に詩を書くようになったのは中二くらい)と後とで、モテに変化があったとも思えないから、ちょっとややこしいけど。

詩はモテに関係ない けど詩人はモテる

ってことが結論かしら。

あ、でも、詩の内容によるか…。グルグルしてきたぞ。

仕方ない、詩でも書くかな。

 

 

谷郁雄さんの回答 

 

女にモテたくてバンドはじめたんすよ、という若者がいる。

世の中の男というものは女性にモテたくて何かをはじめたり、努力したりするものだ。

女性がいなかったら男は毎日だらだらと酒でも飲んで暮らすのかもしれない。

男はアホですからね。

でも、女にモテたくてポエムをはじめたんすよ、という若者には出会ったことがない(笑)

詩で女心がうずいたりするのだろうか?

自分のことを言うと、ぼくは女性にモテたいと思ったことがない。

でも、異性としての女性は不思議な存在で、どこまでも謎が深まるばかりだ。

詩を書くときのぼくは、いつも女性に向けて書いているような気がする。

女性がぼくの詩に共感してくれるとき、「やった!」と心の中で叫ぶのは、詩人ならではの特権だと思う。

やっぱり女性にモテたくて今日も詩を書いているのかもしれない。

 

 

みちるさんの回答

 

前に御徒町凧さんが、詩人はかっこいいという前提で話しているのを聞いて、びっくりしたことがある。

彼にはファンがたくさんいる。

だからかっこいいのか、かっこいいからファンがいるのかはわからないけど。

僕は、詩人はかっこわるいと思っていたから、ずっと詩人であることを隠してきた。

詩人=オタク。スポーツができなくて家にこもってる。天邪鬼で本当のこと言わない。まわりくどい。

そんなイメージがあると思っていた。

でも、最近、オタクの突き詰めるパワーというものが世間に認められ、オタクもモテるようになってきた。

今だったら詩人もモテるかもしれない。

そして、それはマイノリティーの生きる権利が公に認められはじめたという証でもある。

いい時代になりましたね。

 

 

 

 

《 プロフィール 》

 

御徒町凧(おかちまち かいと)

1977年東京生まれ。2006年第一詩集『人間ごっこ』を刊行。以後も詩集を発表し続け、最近の著書としては写真家、佐内正史との共著『Summer of the DEAD』(18年)、『雑草・他』(19年)などがある。また、森山直太朗の楽曲共作者として数々の作品や舞台の構成演出などを手がけ、2008年、楽曲『生きてることが辛いなら』で「第50回日本レコード大賞作詞賞」を受賞。2019年1月から自身主催の詩の朗読会『POETRY CALLAS』を月一で定期開催している。Twitter

 

谷郁雄(たにいくお)

1955 年三重県生まれ。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。note

 

みちる

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。詩集に『NONE』『SEVEN STEPS』『バスに乗ったら遠まわり』『100万円あげる』『10秒の詩-心の傷を治す本』『幸せは搾取されない』『詩人と母』他多数。 

 

 

《 関連リンク 》

・詩人・谷郁雄の日々の言葉 → 連載を終了しました。
詩の定期便