絵本コンテスト「第6回絵本出版賞」で優秀賞を受賞した飛騨高山在住のワダアスカさんにインタビューしました。
鬼泰寺(おにたいじ)というお寺に住んでいた鬼の小僧。
ある日、人食い桃に食べられてしまい、どんぶらこ、どんぶらこと川に流されていくと……。
桃太郎をパロディとした愉快で楽しい作品です。
『もーもーたろう』の制作秘話や面白い作品作りのコツなどについて聞きました。
みんなが笑顔になれる楽しい作品をつくりたいと思っている人は、ぜひご覧ください。
《 もーもーたろう あらすじ 》
鬼泰寺というお寺に住んでいた鬼の小僧。
ある日、人食い桃におそわれて、川に流されどんぶらこ、どんぶらこ。
たどり着いた先は、おばあさんとおじいさんが住む家の近く。
「あれ、おじいさん あそこ!」「あれこーわい! なんとりっぱなももだろう!」
大きな桃を切ってみると、なんとそこから出てきたのは……!?
―とてもユニークで楽しい作品だと感じましたが、何をきっかけにこのような作品をつくろうと思ったのでしょうか?
運転中のBGMがタンゴで。聞いているうちに、「タンゴ、タンゴ、きび団子。きび団子といえば桃太郎」といった具合にダジャレが浮かんできました。
そして、これは絵本になるかもしれない、と思い、さっそく創作しました。
―ダジャレから作品の構想が思いつくなんて、面白いですね。ダジャレや冗談はよく考えるのですか?
日頃から、面白いことを考えるのは好きです。
ダジャレに関しては、父がオヤジギャグが好きなので(笑)、その血が流れているのだと思います。
どういう作品にしたら「面白い」と思ってもらえるかは、意識していますね。
パソコンで作画中のワダさん
―「面白い作品」づくりをするために、心がけていることなどありますか?
私は、海外で生まれて、親子で東南アジア放浪の旅をするなどして、色々なところを訪れました。
そのなか、人や土地によって物の見方、常識などは違いますし、同じ物事でも立場によって感じ方は異なることを学びました。
そういった経験が、作品づくりに生かされているかな、とは思いますね。
―絵本をつくる際、そのほかに意識していることはありますか?
絵のインパクトです。
私自身、子どもの頃絵本が好きでしたが、絵の印象が強い作品のほうが記憶に残っています。
実は、ストーリーはあまり覚えていなくて、成長して読み返してみたとき「あれ? こんな話だったっけ」というのも少なくありません。
それなので、もーもーたろうも絵にインパクトを持たせるようにしています。
絵だけ覚えててお話は歳をとってから改めて理解した、という事も多いので、あまり分かりやすさや簡単な文章に神経質にならなくても良いのかなと思いながら制作しています。
ノートと照らし合わせながらイラストと文字を構成していきます
―イラストを描く際、気をつけたことなどありますか?
もーもーたろうは、色も形も、まるくて可愛らしく描くことを意識しました。
コロコロまるい感じは、動きの速いパンダをイメージしています(笑)。
―ほかに、作品づくりの際、気をつけたことなどありましたら教えてください。
もーもーたろうの作品は、とくに最後の部分は応募時と大きく変わりました。
応募時点の作品は、大きな山場やオチもなく、たんにもーもーたろうが誕生して帰って来るだけでしたが、サラッとしすぎていて。
家族にも「これじゃダメよ」と言われました。
編集の方などから、ページ割り等のアドバイスを受けるうちに、「もっと頑張らないといけない」と思うようになって……。
描いているうちに、キャラクターも確立してきて、話がより良くなっていきましたね。
応募するときは、自分の気持ちと読み手のことは意識していましたが、出版となると売ることも考えなくてはなりません。
すべての人のことを考えると「もっと努力しなくてはいけない」と思うようになりました。
予想外がたのしいラストシーン
―今後の夢や目標などありましたら教えてください。
次の出版につなげていきたいです。
できれば、パロディ系の話を創作できるといいですよね。
昔話に引っかけた形で、作品を発表していければと思っています。
『もーもーたろう』の出版で、さまざまな反響をいただき、刺激を受けました。
お子さんはごまかしの利かない相手なのでドキドキしますが、「面白かった」と言ってもらえたときの喜びは格別です。
さらに精進して、新しい作品をお届けできたらと思います。
(取材・文:三村真佑美)