詩の定期便 23

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By 編集部 / 2022.08.21
あなたが歩く速度は私と違う 〜ある夏の日に〜
 
フロリダアイスコーヒーのグラスが
汗をかいている
となりで
氷水のグラスも
汗をかいている

さっきまで汗をかいていた
あなた と わたしは
汗をかいたグラスを
それぞれ
反対側から見つめている

氷がゆっくり
溶けていくと
時間が過ぎているのが分かる

この速度は
いったい
誰が決めているのだろう
仕事好きの神様だろうか

あなたが
歩く速度は
私が歩く速度と
違っていて
そのため
ふたりで歩くと
どこかぎこちない

その
ぎこちなさは
何を宿しているのだろう
あなたとふたりで
探求してみたい

時々
歩くのをやめ
同じ速さで
止まって

 

 

そばにいないひとに

そばにいない
ひとの名前を
呼んでみたくなる

そばにいない
ひとの眼差しを
何度も思い出す

そばにいない
理由について
考えてみる

そばにいない
時間のほうが
ずっと多い

そばにいない
ひとがそばにいた
時間はとても短い

そばにいない
ひとに頼みたい
ことがでてくる

そばにいない
ひとはなぜ
そばにいないのか

そばにきて
おしえて欲しい

 

 

はぐれた あのこ

ねえ神さま
あのこは元気?
月夜の晩にはぐれたこ

あの砂浜で待ち合わせしようと
約束したのは
いつのこと?

その場所には いま
ドーナツ屋さんが建っている
そこで待てば
日照りや雨がよけられていいかもね

ねえ神さま
お願いします
あのこが
いいこのまま
育っていますように

わたしと釣り合うくらい
ほどよくいい経験を
していますように

はぐれたことが
愛おしくなるくらい
祝福される
再会でありますように

月が雲に隠れ
また現れたときに
その光が
あのこの輪郭を
浮かび上がらせてくれますように

わたしは
こえをかける
「ひさしぶりだね」
笑顔で
涙を流して

 

 

《 この連載について 》
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。詩のデザインレーベルoblaat(オブラート)札幌ポエムファクトリー指導 ポエムピース株式会社・株式会社みらいパブリッシングの社長。1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
 
 
 
 
 
 

 

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