詩の定期便 5
この連載について
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」
15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。
2週間にいちど、ここに詩をとどけます。
*
行きずりのカモメに指揮棒を振っている
行きずりのカモメは歌うの?
それとも楽器を奏でるの?
雨の日のバスに指揮棒振っている
雨の日のバスは歌うの?
それとも楽器を奏でるの?
遠くのカミナリ雲に指揮棒振っている
遠くのカミナリ雲は歌うの?
それとも楽器を奏でるの?
月の砂漠に指揮棒振っている
月の砂漠は歌うの?
それとも楽器を奏でるの?
*
本当はあなたのことが好きだったから
あなたを遠ざけた
あなたはとどまろうとした
そしていまもその場所にとどまっている
けれどあなたはその場所にはいない
*
赤い魚
きみはいつ
自分は特別だ
と 気づいたのか
青い海原を跳んだとき
きみの体は逆光に縁取られ
視界の隅に自らの赤を見た
そのとき
きみは
自分が特別だ
と 気づいた
だが
また海に落ちて
群れをなす仲間たちと
一緒に泳ぐしかなかった
きみは特別な
赤い魚
いままでそうと知らずに
青い魚と群れて泳ぐ
特別な赤い魚
誰もがきみを
特別だと思う
まだそれに戸惑う
何もできない赤い魚
*
みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp
《 記事一覧 》
《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長
1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
《 関連書籍 》
『詩人と母』
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!
『10秒の詩 ─ 心の傷を治す本 ─』
詩:みちる 絵:上村奈央
ロングセラー増刷出来。短い言葉が心の奥まで浸透して、傷を治します。