詩の定期便 4

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By 笠原名々子・nanako / 2021.07.24

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

 

真面目に生きてきたから
真面目に生きてきたのは
彼女の両親の姿だったから
それが当たり前だったから
たまに馬鹿馬鹿しくなり
苛立つこともあったけれど
余計な策をこねくるより
つまらぬ未練に拘るより
ただヒリヒリする風に痛まぬように
熱い息を吐きすぎず口の周りで回し
左右の目で目配せし合って
光をもコントロールして

細い痛みは切符に編み上げ
想いの糸に命を滑らせ
生まれてから死すまでのストーリーの
輝きを一瞬に定着させ続けて

窓の外
背中の下
海の水
山の落ち葉
音楽のような音に包んで
焚き火と花と朝靄と雨と陽の香りで
さらに包んで
傍に置きましょう
いつのまにかそれは花畑

心配事はありません
それは心が心配をやめたから
そのことに薄っすら気付いても
気付くことは
好きなクルミの実を齧るようなものだから
むしろ楽しいだけ

時計は カチ カチ
デジタルは音がしないから失格
合格するのは
靴音や野菜を刻む音や湯の滾る音
汽車の警笛やその響き
時報の音
戦況を伝えるラジオ
遠くから聞こえる呼び声

いままでしてきたことの順序は
すべて間違いがなかった
だからこれからも間違うことはない
振り返っても 振り返らなくても
何も変わらない

墓に水を掛け
手を洗う
竜の口から浄めの湧き水
赦してくれてありがとう
またいつか赦してください

 

 

 

 

 

 

 

〔 詩のあとがき 〕
 
 
書いたあと自分でも忘れてしまっていた詩でした。
今読んでも、書いたときのことを思い出せません。
 
なんとなく残念です。
書いた理由を思い出せないのは、理由は大事ではないのでいいのですが、
書いたときのことを思い出せないのは、なんとなく残念です。
 
書いた詩を忘れていることはしょっちゅうですので、
これもその一つか、程度に思えるのですが、
この詩はとくに、どこで、なぜ書いたのか
どんなふうに書いたのか
悩みながら書いたのか、すらすら書いたのか、
誰のことを書いたのか、など、
全く思い出せません。
 
確かに自分の詩だ、という感覚はあるのですが、
この連載は、担当の笠原さんが過去のブログから
詩を拾ってきてくれるわけですが、
どこかから詩が飛んできて
「忘れてたでしょ、私のこと」と、いきなりどつかれるようで、
毎度、ドキドキしちゃいます。

 

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

《 関連書籍 》

詩人と母
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!

 

 

 

 

10秒の詩  ─ 心の傷を治す本 ─
詩:みちる 絵:上村奈央
ロングセラー増刷出来。短い言葉が心の奥まで浸透して、傷を治します。

 

 

 

幸せは搾取されない
著者 松崎義行
詩の時間シリーズ。読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか