詩の定期便 8

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By 笠原名々子・nanako / 2021.10.16

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せはそこにある
 
 
幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
 

理不尽な罰の滝
無意味で無慈悲な慰め
荒れ放題の中庭
汚染され尽くされ放置された沼
償われない罪の塔

 

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
求めないことが美徳だと
いい含まれても拒みもぜずに

 

命を束ね縛る縄
心に針を刺す偽医者
土を固めるタンク
死者さえ立ち去る荒れ地
轟音爆音無音

 

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
求めないことが美徳だと
いい含まれても拒みもぜずに
骨を肉に変え
血は根から吸い上げて

 

虐げられても
奪われ尽くされ
蔑まれ
疎まれ無視され
たらい回しにいたぶられて

 

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
求めないことが美徳だと
いい含まれても拒みもぜずに
骨を肉に変え
血は根から吸い上げて
種のように硬い拳を隠して
幸せは
そこにある
そこにあって黙って待っている

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくはアクセサリーの一部
 

ぼくはアクセサリーの一部
 
白い大地で揺れるネックレスの一つの粒
土に耳を当てれば朝日が茜色の矢を放って昇ってくる
 
のぼらねばならない登戸のお上りさん
さがらねばならない食べ残しの器
うつくしいあなたのまわりにキラキラがあつまる
 
うつ病に本当の病名はない
名前をつけようとしたあいつがまっさきに病気で逝ってしまった
恨みごとをオブラートに包んでネットに上げる
で 取り下げる
 
ぼくはメクラだった
イメクラじゃないよ
いくらがすきだった
いまもすきかモンキー
好きかも 
ぼくはカモ アクセサリーの一部の また一部
 
われに5月を! と
似合わない服を着て街へワープ→ループ
部屋へ逆戻り本を整理
 
行分けが楽なのは
話を途中でやめて何度もやめてそうすると相手を責めないですむ責める理由なんかあるもんか(門下生落花生ラッカーシンナー今何時肥満児太り過ぎ)
 
アクセサリーは喋らない
せいぜい揺れて外されて冷たくなってひんやり触感になるだけ
ぼくは肥満児だった
いまは暇人
 
うつくしいあなたはキラキラしているだろう
そして当たり障りがない
あなたは服を脱いでぼくを身につける
身に付けさせてと懇願する
ぼくもそれに答えて懇願する

 

 

 

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

《 関連書籍 》

詩人と母
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!

 

 

 

 

10秒の詩  ─ 心の傷を治す本 ─
詩:みちる 絵:上村奈央
ロングセラー増刷出来。短い言葉が心の奥まで浸透して、傷を治します。

 

 

 

幸せは搾取されない
著者 松崎義行
詩の時間シリーズ。読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか