詩の定期便 2

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By 笠原名々子・nanako / 2021.06.26

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

 

便乗目覚め

 

遠慮しないで
目覚めていいよ

目覚めの時を迎えたきみ
自分の気持ちに驚いている

私は
きみの目覚めに便乗して
目覚めようとしている
すすけたオトナ

ダイヤモンドが炭素だと
言い訳しても許してください

 

 

 

 

 

 

消えゆくひとへ

 

苦しみだと思っていたものは
ただの呼吸だった

喉を焼く訳でもなく
肺を破裂させる訳でもない

ただ普通のイトナミだった

苦しみが続いていると思っていたけれど
考えてみれば
それは新しい局面を切り開いていく
生きることの鼓動だった

苦しみはなかった

宇宙のパルスを体が受け取って
同調しているだけだった

永遠に続くものは苦しみではなく
死と分たれた命の躍動だった

苦しみだと思ったのは
センサーの誤作動だった
不慣れゆえの間違いだった

苦しみはない
苦しみはそこにはない
自分をいたわっても
他人をおもんばかっても
苦しみが消えなかったのは
もともと苦しみがなかったせいだ

あったのは
あなたを苦しめるものではなかった
あなたが求めることを躊躇っているものだった
いまさら求める必要もなくなったものだ

だから
あなたはただそれを無視していて構わない
窓から降り注ぐ柔らかな日差しの香りを
浴びていればいい

たとえば
自分が生み出したものの数々
作り出した楽園の数々を
窓辺に並べてみるといい

誰にもみえなくても
たしかにそこにある と
ぼくは知っているから

 

 

 

 

 

 

しずかにすると
きこえなかったものがきこえてくる
みえてくる

しずかにすると
いきのおとが
ゆっくりになっていく
すんだいずみのみなもに
みずのわっかがひろがっていく

しずかにすると
きみがなにをいいたかったのか
とつぜんにわかる
ときのながれがとまって
そらにうかぶうみができる

しずかにすると
だれかにまもられていたことに
きづいてあんどのといきがもれる
なつかしいおんがくのボリュームを
きこえなくなるまでさげてみる
(まだきこえている)

しずかにすると
そこによのなかのすべてのものが
まざってよるになる

しずかにすると
しずかにするだけで
しあわせになる

しあわせのいみは
いままでわからなかったけど
しずかなねいきのなかに
あった
(そういえばずっとあった)

ねいきがきこえなくなって
ほんとうにしずかになったら
おわかれをみみもとでいおう

さよならではなくて
またあいましょう
あえてよかった

 

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

《 関連書籍 》

詩人と母
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!

 

 

 

 

10秒の詩  ─ 心の傷を治す本 ─
詩:みちる 絵:上村奈央
ロングセラー増刷出来。短い言葉が心の奥まで浸透して、傷を治します。

 

 

 

幸せは搾取されない
著者 松崎義行
詩の時間シリーズ。読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか