詩の定期便 3

イメージ
By 笠原名々子・nanako / 2021.07.10

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

 

オレンジジュースの中に溶けたよう

 

いつもライム色のあなたが
体じゅうをオレンジに染めて
恥じらいを露わにしている

「服がくっついてぴたぴたなの。たすけてほしい」

風も止んでしまったから
あなたは
私に救いを求めるしかなった

手を差し出して
引っ張るよう促す

私はあなたに
何度も肩透かしをくらっていたので
少しためらったが
直ぐに左手を差し出した

あなたは右手を精いっぱい伸ばして
私の手に捕まるかのように見えたが
その瞬間に
脇から伸びてきた別の手に捕まった

あなたの体が一瞬宙に舞うと
あなたは苦痛の表情で微笑むと
薄闇の中に溶けていってしまった

私は左手をそそくさと
しまった
恥じらいのオレンジに
身を染めて

 

 

 

 

 

 

5ぶんの3

 

まじめなせいかくはちょっとわきにおいといて
きょうはふだんしていること
ぜんぶさぼって
でんしゃにのればしらないまち
そこからさらにすたすたあるいて
やねをしたにみて
ロープウェイにのれば
わたしのすむまちがひろがる
さらにそのむこうにこうそうびる
うみがけしきのいちばんうえに
よこたわっている

でんしゃでがっこうにかよう
しょうがくせいは
かばんにていきとけいたいをぶらさげて
ピンクのけいとであやとりしてた
どんなちえをまなべは
しあわせになれますか
おしえてよ

やまのうえのどうぶつえんの
かこいのなかのしか
おおきなひとみが
わたしをみると
なにかこたえをいいたくなるよ

きょうはいつのまにかひぐれ
わたしははじめてはいったきっさてんで
せかいのりょうしんとあくいについて
かんがえていたが
イチゴジュースをすいこむたびに
かんがえはきりかわっていく

とおくで
きらきらひかっていた
かわのながれ
いま
めをつむるとわたしのなかにあるが
わたしはそれをぬすんできたの?
いや
まもっているんだ

いいきかせて
みせをでると
じぶんのへやをめざして
まよわずにかえりつく
そんないちにちの
5ぶんの3

 

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

《 記事一覧 》

この連載のすべての記事を表示する

 

《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

《 関連書籍 》

詩人と母
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!

 

 

 

 

10秒の詩  ─ 心の傷を治す本 ─
詩:みちる 絵:上村奈央
ロングセラー増刷出来。短い言葉が心の奥まで浸透して、傷を治します。

 

 

 

幸せは搾取されない
著者 松崎義行
詩の時間シリーズ。読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか