詩の定期便 1

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By 笠原名々子・nanako / 2021.06.12

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

 

あのなんでもない

 

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻ることができない

あの
なんでもない
意味のない風景の
一コマに戻りたい

あの
なにも思わなかった
忘れてばかりの日々に
帰るように

あの
命とおなじ重さだった体に
帰るように

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻りたい

前も後ろもない
流れない時間の
真ん中へ
入っていきたい

 

 

 

 

 

 

幽霊と会ったのは、確か5回目です。

膝をトントンと叩かれて目を覚ましました。

周りを見渡しましたが、誰もいません。

また目を閉じて、眠ろうとしましたが、トントンとまた誰かが膝を叩きました。

とても優しい叩き方なので、好感を持ちました。

半身起き上がってベッドから薄暗闇に目を凝らすと、縞模様のパジャマを着た女の幽霊がみえました。

空気がザラザラしています。

幽霊が出てくる時はいつもそうです。

私は怖くなって灯りをつけました。

するとやはり幽霊は消えました。

 

 

 

 

 

 

足りない気持ちに包まれて

 

太陽と風の香りがする

ベッドに顔をうずめて

透明な涙を零してみたら

滴はすぐに

見えなくなった

部屋に舞う埃の小宇宙

フッと吹き飛ばして

どの靴を履いて出かけようか

考えてみた

君は遠くて近いから

君はやさしくて残酷だから

ボクは君と無関係に

生きていく

さよなら

さよならをおそれた

愛しい時間たち

もう君がいなくても

足りない気持ちに

包まれて 寄り添って

生きてゆける

 

 

 

 

 

この果てしのない道にも果てはあるのだ

この道と呼ぶものは道ではなかったのだ

吹き荒ぶ冷たい風の不来方はもう温んでいるのだ

どこかに疲れと痛みを感じるがそれは自分ではないのだ

自分がしてきたことは静かに浮かぶ花の船になったのだ

争いはなかったことになり慈しみが溢れているのだ

見てきたものが風景になり季節が巡り始めるのだ

始まりのような終わりが風にキラキラと舞い立ちぼくは見上げるのだ

 

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

《 関連書籍 》

詩人と母
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!

 

 

 

 

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詩:みちる 絵:上村奈央
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幸せは搾取されない
著者 松崎義行
詩の時間シリーズ。読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか