詩の定期便 15

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By 編集部 / 2022.01.23

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

白いそれ

 

 

灯台?
岬に突き出たセンサーは
敏感すぎて
人の
声ともつかない声まで拾ってしまう
巨大なパラボラを携えている訳ではないけれど
たまに
何かの電波を受信してしまい
その都度あたふたする
表情をあわてて取り繕おうとするのだが
おそらく
誰かに監視されている訳ではない

 

灯台のようなそれは
何のためにそこにあるのだろう
ひょっとして
灯台自身の一人芝居?

 

月の夜に
カメラの感度をあげて
それを撮影してみた
シャッターボタンがぬるくなるまで
指を離さなかった

 

凪いだ波は無数のカイコが分泌した絹
群青の大地の崖の上に
白くなめらかに浮かぶ
立ち上がったそれ

 

私は黙れば黙るほど
饒舌になる
誰かがニヤリと嗤い
私は灯台の灯に照らされる

 

 

 

 

 

見つめられている

 

 

線に沿って
刃をあてて切るのですよ
定規を当てて

 

あなたは先生のように
やさしく命令した

 

しかし
まっすぐに切るのはむずかしい
いっぺんで
し終えようとするときには
いつもうまくいかないことばかりを想像してしまう

 

刃は進む
叫び声を巻き込みながら
大事なものを絶ち切りながら
そのためか
刃は戸惑い
よどみの吹き溜まりを作る

 

こんなことをしなければよかった
してきたことは逆さまから見ても
そこに佇みつづける

 

溜息とともに気を散らす
切り取られたものが
私を見つめている

 
 

 

 

 

 

ポッカリあいた穴

 

 

詩人が青空に白い雲があると言う
それで私は空に雲があることを思い出して
見上げてみる

 

空は青い
その言葉のせいかどうかはわからないが
確かに空は青いと思われた
その青空に
雲が幾つか浮かんでいる

 

詩人は
雲は地球に張り付いているようだと言う
浮かんでいると言うより
張り付いていると言う

 

なるほど
雲は地球にへばり付いている
そして青空は消え
群青の宇宙が広がっている

 

詩人はつづけて言う
宇宙は飲み込めるよ
大きく口を開けなくても
小さなカプセルだから大丈夫と

 

私は手渡されたその小さなカプセルを
唾と一緒に飲み込んだ
すると一瞬にして私は
宇宙の外側になってしまった
自分の意思が宇宙を形成しているようだ
星々の運行やその色
生命の生き死にも

 

詩人は言う
私は詩人ではないと
私は旅芸人だと
そして もう
旅の一座となって去って行こうとしている

 

私は引き止めたかったが
引き止めることはできないと感じていた
さびしさが溢れてきた

 

私は私にあいた穴から
青空を見た

 

ポッカリとしていた
穴から覗いた地球の風景

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

本について