詩の定期便 21

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By 編集部 / 2022.06.26

投稿列車

投稿列車に乗って
まだ見たこともない街へ行ってみたい
嗅いだことのない香りを手に入れ
感じたことのない陶酔に浸りたい

大きなリスクは覚悟の上だ
夢を差し出して
わらしべ長者を真似て
もっと大きなものを手に入れるのだ

誰もが無理だというもの
手に入れた瞬間に自分をも見失ってしまうだろう

投稿列車がやってくる
駅にではない
今夜
ここに

きみは飛び込めるかな
なにも持たず
誰にも告げずに

明日はもうない
記憶さえ残らない
知ってるだろうか
今夜限りだということ

 

 

遠い海

鏡の野の水たまりに
月のかけら落ちて
みゅーと泣くの 誰

堤防の端っこで
あのこがなくしてしまった
紐に括ってあったもの 何

風に訊いてみたいけど
湿気混じりて
おまけに潮の香りするの 何処

疑問符型の鍵で
あなたのハートは解き放たれるの
返事が来るの 何時

問いが生まれ
答えと出会えねまま
消えて行くの 何時でも

 

 

傷口

痛みを
手で覆い
心で覆うと
どこに痛みがあるのか
分からなくなってくる

ひょっとして
きのう喧嘩した
あの場所に
あの場所の床に
落ちているのかもしれない

月の光が差してきたのは
その夜

干からびた痛みは
絆創膏に吸い取られ
息づいていた

絆創膏から
こぼれ落ちた痛みは
皮膚に焼き付けられ
すべやかな傷口となって
恋人の唇に愛されるのかもしれない

 

 

《 この連載について 》
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。詩のデザインレーベルoblaat(オブラート)札幌ポエムファクトリー指導 ポエムピース株式会社・株式会社みらいパブリッシングの社長。1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
 
 
 
 
 
 

 

本について