詩の定期便 20

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By 編集部 / 2022.05.22

 

15分後 と 私

 

5分おきに気持ちが変わる
10分おきに違うことをやる
30分経つと悩みが何かを忘れている
1時間後にかかってくるはずの電話
3時間後にはベッドに入りたい
10時間後には灰色の机の上でパソコンに向かい
24時間後 私はこの世にたぶんいるだろう
3日後 気ままな旅に出たいけど
7日後 気ままといっても宿は予約してしまったから
1か月後 いつものように会社に通勤
3か月後 いつものように片想いだった相手のことは忘れ
半年後 アパートの更新日が過ぎ
1年後 季節はやはり初夏に違いなく
5年後 私の三回忌に
10年後 枯れた草花はそのままにしておいてください
 
50年後 誰も私のことを知らず
 
15分後 ブログに一つの詩がアップされている

 

 

 

setsunaの前奏曲

 

あなたはわたしと
遊ぶだけ
刹那の哀しみを
見にゆくために
 
あなたは
わたしといても
幸せになれない
積み重ねることはできても
それはいつか踏み台になるだけ
 
とび箱の前で
息を整える暇もなく
まっしぐらに
挑んでいったけど
とんだ後の世界は向こう側
別の人が
待っている
 
あなたは
初めから気づいていたでしょう
 
わたしと見る
一風変わった
ドラマチックな景色は
あなたが幸せになるための
前奏曲
わたしにとっては
クライマックスであることを
 
出会った時
砂浜で
波は大きく波打ち白い泡を巻いて
反対した

 

 

 

今はまだ言えないけど

 

くるぶしまでのソックス
初めてのキス
串焼きのタオルケット
煙たい朝の涙
 
四方山話の文集
やかんに容れたハチミツ
消毒済みのウエイトレス
消し忘れた欲望
 
座りっ放しのドアマン
見えそうで見えない未来
ときめくだけの柱時計
やられっ放しのだし巻き卵
 
コンクールに出す予定の指サック
澄まし顔のトンボ
ヤクルトをのむイリオモテヤマネコ
砕け散った夢のかけら
 
口を開けたままのポスト
すり鉢状の乳房
草色の手鏡
緩みきった緊張
 
額縁が溢れかえるの画廊
ずんだもちの差し入れ
やさしくない性格
クリームを盛ったデザート皿差し出す手

 

 

 

 

《 この連載について 》
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。詩のデザインレーベルoblaat(オブラート)札幌ポエムファクトリー指導 ポエムピース株式会社・株式会社みらいパブリッシングの社長。1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
 
 
 
 
 
 

 

本について