詩の定期便 17

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By 編集部 / 2022.02.20
この連載について
 
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

こえ

 

たすけてください というこえも
もう ききとれない
ほしのひかりが じめんにあたるときの わずかな おとよりも
ちいさくなってしまったから
 
あとは まぶたを いっしょうけんめいに あけて
ゆびさきを さしだして 
あのひとに つたえるしかない
 
まだ おとなになったばかりなのに
からだがしびれ いきがくるしい
 
くびすじには
ははの ての やさしいかんしょくが
まだ のこっている
 
かがみのまえにたつと
わたしは つよいめをして みらいをゆめみていた
はしりだせば
だれもおいつけなかった
 
くつひもをむすび
かばんをもって
まいあさ でかけた
でんしゃの わっかに つかまって
いやほんからきこえる おんがくにききほれていた
 
それが いま
わたしは
じめんに はうように よりそって
じぶんの しんぞうのこどうも いたみとしてしか かんじられない
 
なにかが わたしを とりのぞこうとしている
まけたくない 
という ふとでた ことばが わたしに まけをおもいしらせた
 
たすけてください 
と いってみた
じぶんにもきこえないよ と
つっこみをいれた
 

 

 

弱さ

 

これ以上弱くなれないという弱さ
命の崖っぷちを歩くことができない自分
 
生きている価値というのはどういうものだろう
顕微鏡の中でうごめく細胞をみながら
思い出の海を捜し回る
 
いつから道はなくなってしまったのか
それまであったはずだった道は幻想だったのだろうか
 
答えてくれる者はいない
白い雪が街に降り積もる
いつもと違う街の風景
これは幻想ではなく現実なのだろうか
 
頼りなく指先を動かす
干からびかけた手が
誰かの意志で動いているようだ
 

 

 

いつもと違う日

 

林の上の澄んだ空気に
月が明るく光り
 
降り積もった雪を集めた小山に
苦しみを抱えた人が腰を下ろす
 
誰の文句も受け付けない場所
 
息をすると恥ずかしいほど
たっぷりと白い湯気が出る
 
でも誰も見ていない
 
静かさが
包む
 
心配事は
氷に閉じ込める
 
きょうはいつもと違う日
栞の日

 

 

 

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。詩のデザインレーベルoblaat(オブラート)札幌ポエムファクトリー指導 ポエムピース株式会社・株式会社みらいパブリッシングの社長。1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
 
 
 
 
 
 

 

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