詩の定期便 19

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By 編集部 / 2022.05.08
この連載について
 
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

消えている

 

 
あなたのことを
見失っている間に
私の住む街が
消えてしまった
 
住民もろとも
居なくなってしまった
それなのに
騒ぐ人は
誰もいなかった
 
ニュースにもなっていない
ネットで検索しても
出てこない
 
オロオロしていると
見る間に
あなたがどこにいるのか
という思いが
消えていくことに気がついた
 
きのうのメールの返事もこないまま
出したことさえあやふやになってゆく
 
ブログに書き綴った詩のサムネイルだけが
木片のように流れ着く
 
やっとの思いで
ブログの端っこに貼り付けた
終わりの方は
失くなっている
 

 

 

貝殻の瞳

 

 
あなたのいいところは
眼が光るところだ
タイミングよく
光るところだ
 
相手は背筋をゾゾッと震わせ
もう逃げることはできない
 
月の光の中で
あなたの眼だけが光り
波音が遠ざかる
 
時間の縄に縛られた二人は
窮屈に互いの体を行き来する
 
柑橘系の木の実の香り
 
どこで弾けたのか
そこここに
散らばり
もう
貝殻と区別がつかない
 

 

 

ひやす

 

 
ひやして
見る
 
湯気が立たない状態で
見てみる
 
それが大事
 
ついでに
大事も冷やす
 
すると
ただの 事 になる

 

 

 

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。詩のデザインレーベルoblaat(オブラート)札幌ポエムファクトリー指導 ポエムピース株式会社・株式会社みらいパブリッシングの社長。1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
 
 
 
 
 
 

 

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