詩の定期便 18

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By 編集部 / 2022.04.24
この連載について
 
「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

わたしはやっている

 

 
詩を生むよりも
生活や仕事を大事にしなきゃと
思っているんだね
 
両方やれるんじゃないかな
わたしは
やっているよ
 

 

 

空の渚に

 

 
ドカンがドカンと響いた
夜間に
きみというあなたがやって来た
きみというのはあなたの名前だ

 
あなたは
わたしの
穴の空いたタオルをみて
穴の空いていないタワシをわたしに渡した

 
わたしはタワシを
タオルの穴からすかしてみてみた
すると
タオルに空いた穴が
あながち悪いものではないことがわかり
代わりにまっさらなタオルを買うのは罪ぶかいことのように
思われてきた

 
きみはわたしにタワシの話しをし始めた

わたしは仕方なくその話を聞いていたが
その話は長くそのうち飽きてしまったので
いつの間にか眠ってしまった

 
またもやドカンがドカンと響いた
きみというあなたは帰っていった
タワシもどこかへ行ってしまったのか
みあたらない

 
ここには
もう誰もいないみたいだ
ただ
波が頭上で
波打っている

 
そのうち
凪もやってくるだろう
空の渚に
 

 

 

きえさる

 

 
わたしはいなくてもいいひと
いないほうがいいひと

 
ひつようとしてくれているひともいるが
きらっているひともいる

 
かみさまにいかされているが
また
かみさまにみすてられてもいる

 
いきているめんどうが
つみかさなる
とうひしたいおもいが
ながれこんできて
こきゅうができなくなる

 
きべんのきりくちから
ちがながれて
とまらない

 
みつめることはできるが
うごくことはできない

 
とおくのみかづきが
だぶってみえる
わたしのめでは
もうくっきりとみられない

 
おもいでがあふれて
こぼれだす

 
へやのゆかが
つかいものにならなくなる

 
いきていきたいひとが
しにたいひとをひはんする

 
ひはんにあたいする
とおもう

 
はるのくうきは
あたたかくて
にんげんのあたまをひやせない

 
まんかいのさくらとともに
ちるのだけは
さけたいものだ

 
せめて
つきのでていないよるに
できれば
まちのくらがりで
いっしゅんのひかりをはなち
きえさりたいもの

 

 

 

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。詩のデザインレーベルoblaat(オブラート)札幌ポエムファクトリー指導 ポエムピース株式会社・株式会社みらいパブリッシングの社長。1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
 
 
 
 
 
 

 

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