ゼラチンの起源は、古代エジプト? ゼリーづくりに欠かせないゼラチンの正体
みんな大好きな、ぷるぷるのゼリー。
これをつくるもとになっているのが、ゼラチンです。
そもそも、この不思議な粉、ゼラチンは何からできているのでしょう。
そんな意外と知られていないゼラチンの正体を、117年の老舗ゼラチンメーカー「ゼライス」の軌跡をまとめた書籍『ゼライスのキセキ 未来に引き継ぐ117年の軌跡と東日本大震災からの復興の奇跡』(稲井謙一・『ゼライスのキセキ』製作委員会 著)から紹介します。
ゼラチンって何からできているの?
ゼラチンは、動物の骨や皮などに豊富に含まれているコラーゲンからつくられます。
これらの原料中にはコラーゲン以外の不純物も多く含まれていますが、これを精製することでできる動物性たんぱく質が、ゼラチンです。
生体内のコラーゲンは組織にしっかりと結合しており、脂肪とも近い位置にあ ります。
そこからコラーゲンだけを取り出すことは、実は簡単ではありません。
そのため、ゼラチンの製造工程では数多くの緻密な工夫がなされ、不純物が取り除かれます。
皆さんがスーパーなどで手に取るゼラチンはコラーゲン由来の精製物で、全体の約 90パーセント近くがたんぱく質であり、脂肪はほとんど含まれていません。
ゼラチンは、完全に乾燥していると固くて強い素材で、熱いお湯に入れてもなかなか溶けません。
しかし、水の中にしばらく入れておくと水を吸って柔らかく膨らみ(これを「膨潤」という)、お湯で簡単に溶けるようになります。
お湯に溶けたゼラチンは、冷やすと固まり、ゼリー状になります。
ゼリー状になったゼラチンは、体温程度の温度でも溶ける特徴があります。
私たちの身近な素材からできるゼラチンとしては、「煮こごり」があります。
煮魚や肉の煮込みが冷えたとき、煮汁がプ ルプルとしたゼリーのように固まってい るのを見たことがありますよね。これが煮こごりです。
これは、魚や肉のコラーゲンが加熱によって煮汁に溶け出し、ゼラチン化してゼリー状に固まったものです。
ゼラチンの起源は、古代エジプト時代にあり
ゼラチンのルーツは、今から5000年以上前、古代エジプトの「にかわ(膠)」 の製造から始まったと伝えられています。
にかわとは、動物の皮や骨、腱などを水と共に加熱して製造したもので、接着剤や粘着剤として使われてきました。
ちなみに日本語の「にかわ」という言葉は、「皮(かわ)」を「煮(に)」てつくる製造法から生まれたといわれています。
にかわの基本的な製法はすでに古代エジプト時代にはでき上がっていたと考えられており、6世紀ごろの中国の記録には、ほぼ完成された製造技法が残されています。
現在日本で受け継がれている技法も、それとほとんど変わりがありません。
ヨーロッパではバイオリンなどの弦楽器の接着剤として広く用いられてきたほか、日本画の世界では、絵の具と画面を接着するのにも使われています。
また、伝統工芸品や美術品の修復にも広く利用されています。
19世紀になると、ゼラチン溶液に硝酸銀を加えてつくる写真乳剤が開発され、感光剤として広く使われるようになりました。
現在でも、銀塩写真フィルムの素材としてゼラチンが利用されています。
その後も研究開発が進み、さまざまな特性と使い勝手のよさを生かして、食用や医薬用、写真用、工業用など、幅広い分野で活用されています。
©『ゼライスのキセキ』
(本文より抜粋 ここまで)
いかがでしたか?
ゼラチンのルーツが5000年以上前の古代エジプトだったということ、食用だけではなくバイオリンなどの接着剤や銀塩写真フィルムの素材として使われていたことなど、意外な驚きがたくさんありましたね。
大げさかもしれませんが、ゼラチンは人類の進化とともに歩んできたのですね。
これからゼリーを食べるとき、ふと思いを馳せてしまいそうです。
稲井謙一(いない・けんいち)
ゼライス株式会社取締役社長
1964年宮城県仙台市生まれ。慶応大学法学部卒業後、東京ガス(株)入社。1991年に同社を退職した後は、塩釜ケーブルテレビ(現宮城ケーブルテレビ(株))立ち上げに携わったのを皮切りに、稲井善八商店(現株式会社稲井)社長、宮城化学工業株式会社(現ゼライス株式会社)社長、塩釜ガス株式会社社長、宮城ケーブルテレビ株式会社社長に就任。持ち前の決断力と積極性、東北人ならではの忍耐力を発揮して、東日本大震災後の大幅減収から、2018年には奇跡の「レ」字型回復を果たし、創業以来最高の経常利益を達成した。趣味は読書、ゴルフなど。
『ゼライスのキセキ』製作委員会
ゼライス株式会社従業員、OBを中心として構成される本書籍制作チーム。本来業務の傍らフォトコンテスト実行委員会の立ち上げや、OBへのインタビュー、記録写真の撮影、デザートレシピの考案・調理、撮影の立ち合いなどを担当。Zoomを駆使して八面六臂の活躍を果たした。また、原稿のファクトチェックや校正、イラストチェックなど書籍づくりに必要な工程にひと通り携わり、心も体もひとまわり大きくなった強者集団。
《 本について 》
『ゼライスのキセキ』
著者 稲井謙一、『ゼライスのキセキ』製作委員会
家庭用ゼラチンパウダーのパイオニアが、ずっとやってきたこと、これからもやっていくこと