「キックバックで1億円以上儲けた」巨額の不正融資「かぼちゃの馬車事件」を引き起こしたスルガ銀行の素顔

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By 編集部・editors / 2021.10.18

 

 

「少しでも将来の足しになれば…」そんな気持ちで何かはじめたいと思っている人は多いはず。

ただ、悲しいことに、そうした将来への不安や前向きな想いを利用した詐欺がこの世には存在しています。

2018年に発覚し、世間を騒がせたスルガ銀行によるシェハウス投資をめぐる不正融資「かぼちゃの馬車事件」。

被害者は700人以上、被害総額は1000億円以上にのぼりました。

 

被害者のひとりで借金2億円を背負うことになった冨谷さんは被害者同盟を設立し、スルガ銀行の元行員に話を聞く機会を得ます。

そのときの会話を『かぼちゃの馬車事件 スルガ銀行シェアハウス詐欺の舞台裏』(冨谷皐介著)より紹介します。

 

 

 

スルガ銀行の素顔

 

あくる日、情報収集に勤しんでいた私に、スルガ銀行の元行員から話を聞く機会が訪れた。

そこには、先日知り合ったばかりだが信頼のおける人物と直感した民放キー局の記者にも同席を依頼した。

待ち合わせ場所に指定された喫茶店で私達の前に現れたその元行員は、氏名の秘匿を条件にして切り出した。

「この場限りですよ。今も監視されている可能性がありますから……」

「監視?」

「スルガは辞めた人間が情報を漏らさないか探偵をつけているんですよ。……そんなこともする組織なんです」

一瞬、冗談か妄想の類いかとも思った。だが、その元行員は嘘をついているようには見えなかった。

「スルガは反社会的勢力ともつながっていますし、社内ではパワハラも当たり前の環境でした。そんなところで優秀な社員というと……要するに、法律違反を平気で行なって業績を上げられるやつです」

「今回のシェアハウス投資スキームにも関係が?」

「はい、キックバックで1億円以上儲けたと言って、得意になっている同僚もいました。仲介業者から足がつかないように、レターパックに現金を入れた物を受け取るんですよ。どういう金か周りも皆わかっていますけど、誰も何も言わない……金庫を買わないと金が入りきらないって笑っていました……これがそいつの写真です」

彼が見せた写真には、分不相応な高級時計を腕に巻き、満面の笑みを浮かべた30代前半くらいの男が写っていた。

私は白くなるほど強く拳を握りしめていた。

それは自分達が、シェアハウスを建てるために融資を受けた金だ。

しかし、銀行から建設のために融資された金が、キックバックという形で行員の手に渡りポケットマネーとなっていた。

この行員に騙された仲間が少なからずいるということを想像するだけで血が沸騰しそうだった。

「あなたも経験が?」

記者の質問に、元行員はバツが悪そうに頷いた。

「はい、業者から食事をご馳走になったことは何度かあります。けど、現金を直接受け取ったことは一度も……」

真実かどうか甚だ疑問ではあったが、ここで彼を追及するよりも情報をさらに引き出した方が良いと判断し、冷静に対応した。

彼が無罪とは言うまい。だが、すでにスルガ銀行を退職しているのだし、食事だけという彼の言い分は、理解できた。

結局、人は環境や雰囲気に大きく左右されてしまう。そこで抗い過ちを指摘できる者はそう多くはなく、また声を上げたところで是正できるとは限らない。

「冨谷さん、今日私が来たのは、皆さんが『同盟』を作ったことでスルガに動きがあったって聞いたからなんです」

「動き?」

「ここまで大きな集団になって、スルガにぶつかってきたのは冨谷さん達が初めてなんです。かなり警戒しているという情報も私に入ってきています……こんな言い方はなんですけど、何でもやる銀行です。冨谷さんは命の危険もあるかもしれません。どうか、気を付けてください」

「そんなに!?」

記者が驚きメモにペンを走らせた。

「……はい、繰り返しますが、スルガは銀行を辞めた行員に探偵を付ける銀行です。そして、詳しくは言えませんが、反社ともつながっていますので……そういう連中も―」

「上等ですよ、やるならやってみろって話ですよ。こっちは死をも覚悟していましたから、怖いものなんてないんです」

記者と元行員は、私の言葉に驚いた様子だった。

「それにここで私が死んだらもっと話題になりますよ。スルガだって殺しを隠し通せますかね? ともかく、私は1人ではありません。同盟の仲間がいるから、今の私は強いです」

私はまったく恐れを感じなかった。仲間がいるという現実が、恐怖心をかき消していたのだった。

元行員から聞いたスルガ銀行の内部事情、それは巨悪の存在と恐ろしさを知らせると当時に、怒りの炎に油を注ぐことにもなっていた。

 

(本文より抜粋 ここまで)

 

 

著者の冨谷さんを中心とする被害者同盟は、その後、消費者問題事件としては前例のない累積1570億円の債権放棄を勝ちとることになります。

それは、個人の力が集まれば銀行という巨大組織にも立ち向かうことができるということを証明した、歴史的瞬間となりました。

 

 

冨谷皐介

SS被害者同盟(スルガ銀行・スマートデイズ被害者同盟)代表。
日本の家電メーカーで中間管理職として勤務していた、50代の元サラリーマン。25年以上にわたり家電業界に従事。社内では数多くのプロジェクトに携わり、成功に導く経験を持つ。
約2億円の融資を受けて購入したシェアハウスの評価額が、物件受け渡し直後で約1億円しかないことを知り、取り返しのつかない失敗をしたことに気づく。深く悩んだ末に、愛する家族のために保険金(団信)目当ての自殺を考えるようになるが、時を同じくして労災による従兄弟の事故死が発生。自分の家族を同じように悲しませてはいけないと自殺を思いとどまると、自分をだました者たちに対しとてつもない怒りが湧き、死んだ気になってスルガ銀行と闘うことを決意する。
誰もが無駄だと言ったスルガ銀行との闘い。最初はたった1人での闘いだったが、勝利を諦めずに行動した結果、次第に人が集まり、スルガ銀行・スマートデイズ被害者同盟(SS被害者同盟)を設立し、代表となる。河合弘之弁護士との運命的な出会いがあり、結果的に消費者問題事件としては前例のない代物弁済的スキームで債権放棄を勝ち取る。(第3次調停までの不債総額は1570億円)。
今は、サラリーマン人生に別れを告げ、一般社団法人ReBORNsを設立し共同代表理事に。元被害者の仲間とともに詐欺事件に巻き込まれている方たちの救済支援に当たっている。特に、スルガ銀行によるアパート・マンションの不正融資で過去の自分と同じように苦しんでいる被害者救済のために、2021年5月25日、スルガ銀行不正融資被害者同盟(SI被害者同盟)を設立。その弁護団(SI被害弁護団)の後方支援などに取り組んでいる。​​

 

《 本について 》

かぼちゃの馬車事件 スルガ銀行シェアハウス詐欺の舞台裏
著者 冨谷皐介
金融事件史上、最大の不正融資事件! 巨大組織スルガ銀行に勝利した、被害者同盟の闘いを克明に描く