詩集を作る 詩の学校 ポエムファクトリー(第3回)
この連載について
詩は神聖なもの?
特別な人にしか書けないの?
詩人として、作詞家・書籍編集者として表現活動を続ける松崎義行(別名:みちる、マツザキヨシユキ)さんによる、詩の発想法を学ぶ連載です。
第3回目のテーマ:
詩集を作る
作品が溜まってくると、まとめて本にしたくなるのは自然です。
私も溜まってきた作品を何度となく本という形にまとめてきました。
人生経験が浅く、活動範囲の狭い思春期のころは
ちょっと背伸びして好きな詩人の真似をして詩集にまとめ上げました。
まとめ上げるポリシーはすべて勘に頼りました。
溜まった詩を見ると、季節の順に並べられる気がして
詩を書きはじめた5月から、順に並べていきました。
なんだか物足りない気がしたので、
一番最初に序詩を書き下ろして加えました。
その詩は、全体を見渡すような、
詩集のテーマ(詩人のテーマ)を表すような詩であったと
あとから気づきました。
ところが、
まだまだ物足りない気持ちは消えなかったので
目次を付けて
目次の詩のタイトルに一言コメントをつけることにしました。
よく雑誌にあるような形です。
書き終えるとあとがきもほしいな、という気持ちになりました。
そこであとがきの代わりに詩を書きました。
ここには言いたいことをダイレクトに書きました。
それは、まだ出会ってない読者との出会いに憧れ、感謝する気持ちでした。
そうして全体が出来上がってきたのですが
きっと
もっとかっこつけたいという欲張りな気持ちが働いたのでしょう。
知り合いの学者先生(恩人)に
跋文(バツブン)を書いてもらうことを思いつき
早速依頼しました。
原稿が揃うと印刷所に持ち込み
活字にしてもらいました。
当時は和文タイプライターで打ってもらい
版下を作るという印刷方法でした。
本文を初めて活字で見たときの感動は
雑誌に掲載されたときの感動を超えていました。
生まれたばかりの「作品」に見えたのです。
それから学校の美術の先生に装画を頼み
それも印刷所に持ち込みました。
ゾウゾクするような抽象画でした。
詩集は印刷が仕上がった日が発行日でした。
隣の席のクラスメイトの加奈子さんに見せたら
立ち上がって宣伝してくれてあっという間に
飛ぶように売れてしまったのです。
幸運なスタートでした。
それから、自分の詩のテーマなど意識せずに
書きたいことを書き
溜まったら本を出す、という
贅沢でわがままな出版を続けてきました。
おかげで
書き続けることに喜びを感じているのですが
賞を取ったり、詩壇で称賛されることはありませんでした。
詩人たちとの付き合いも、
気ままにしてきましたが
多くの出会いがあり、
自分の作品と比べてみることも、分析してみることも
数え切れないほどやってきました。
そのなかで、
当たり前といえば当たり前ですが
テーマを決めて、自分らしさを決め込んで詩を作っていくことの大事さを知りました。
しかし
それを知ったからと言って
好き勝手に書くことの楽しさを謳歌してきた自分は
姿勢を直すことが困難でした。
ただ、他人には、詩人が認められるために
テーマを決めて書くことの大事さを訴えています。
そういえば
先日高橋睦郎さんと会食の席で
高橋さんが若手の女性詩人に
テーマを決めて書いているか質問し
依頼原稿が多いからあまりそれができないと答えると
どんな依頼だろうがテーマに引き寄せて書かなきゃだめだ
というようなことをおっしゃっていました。
ベテランも新人もテーマを意識して作品づくりするのが重要なんですね。
あらためて自分のわがままさに
警鐘を鳴らしたい気分です。
−この連載はブログ「詩の学校 ポエムファクトリー」を元に構成しています−
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webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)
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《 松崎義行さん プロフィール 》
詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長
1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。
《 関連書籍 》
『詩人と母』
著者 田原・松崎義行
亡き母に捧げる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!