近年、書店でコーナーができるほど注目されている「眠り」。

この「眠り」を生涯の生業にすることを決め、「快眠コンシェルジュ」としての道を歩んでいる女性がいます。

それがヨシダヨウコさん。

 

20代の頃、睡眠を削って働き、極度の疲労とストレスで前髪が真っ白に。

今はその白い前髪をトレードマークに変え、日本人が忙しい時にいちばん犠牲にしやすい「眠り」の大切さを伝える活動を、セミナーやコンサルティング、そしてウェブ発信を通して行なっています。

 

そんなヨシダヨウコさんの著書『眠りのチカラ』は、これまでの経験・知見をすべて詰め込んだもの。

発売前から書店の注文がひっきりなしに届き、編集部を驚かせました。

それだけ注目されている「眠り」や本の内容、そしてヨシダさん自身について、たっぷり話を聞かせてもらいました。

 

 

話を聞いた人:ヨシダヨウコさん

ココロとカラダを整える快眠コンシェルジュ

発酵食、漢方、アロマ、リラクゼーションヘッドスパなどを学び、睡眠改善の仕事を始動。近年では「健康経営」「安全運転支援」の一環としての睡眠改善研修にも注力している。2020年9月、初めての本『眠りのチカラ』を出版。

ネムリノチカラ https://nemurinochikara.com/

 

 

 

睡眠は、日本人がいちばん犠牲にしやすいもの

 

― いま、「眠り」がここまで注目されている理由は何だと思いますか?

最近、書店に「眠り」のコーナーやカテゴリーができているほどなので、気にされている人が多いのかなと感じます。

睡眠というのは、日本人が一番犠牲にしやすいところなんですよ。時間がない!じゃあ睡眠を削ればいい、というふうに。

私は睡眠の研修をするとき、必ず受講者の方に睡眠時間を尋ねているのですが、だいたい6時間くらいの人が多いです。

6時間以下になると、免疫力が低下して、体に起こる問題が増えてくるんですね。だから日本人は、もう少し寝たほうがいいと思います。

 


白い前髪をアクセントに、スタイリッシュなヨシダさん。腕につけているのは時計ではなく、睡眠スコアを測るスマートウォッチ。

 

 

本当は、みんな何かしら、睡眠の悩みを持っている

 

― 睡眠は大切と知っていても、どう大切にすればいいか分からない人は多いと思います。私も本の「7つの動物タイプ別睡眠改善法チャート」で初めて自分の睡眠を認識できました。

このチャートは、睡眠を大事にしてほしい、もっと身近に感じてほしい、と思って考えました。イベントでも、自分はリスだった、フクロウだった、と盛り上がってとても人気があるんです。

 

眠りのチカラ』で紹介されている動物タイプ別睡眠改善法チャート。やってみると、睡眠を身近に捉えることができます。

 

― ヨシダさんは、このなかに当てはまる動物タイプはありますか?

私は何にも当てはまらないと思います。他に当てはまらないと言った人は、知り合いに1人しかいませんでした。このチャートをやってみると、みんな何かしら睡眠の悩みをお持ちだということが分かるんですよね。

 

 

幸せな人生を送るために、体のメンテナンス=睡眠はとても大切

 

― 「快眠コンシェルジュ」とは、どのようなお仕事なのでしょうか?

私の活動は、「幸せな人生にするために寝てね」と言い続けることだと思っています。

幸せになるには、その人が毎日の生活をちゃんと送れないとだめですよね。人生の最後の最後まで、自分の足でしっかり歩いて動けるように。そのためには体のメンテナンス、つまり寝ることが大事なんですよね。

 

― ヨシダさんは、セミナー、コンサルティング、ウェブ発信など、あらゆる手法で「眠り」について発信されていますね。

そうですね。企業での研修以外にも最近では、オンラインマガジンで連載をしたり、枕の監修をしたりしています。その他、不眠症など眠りの悩みを持つ個人の方を対象にカウンセリングなども行っています。

 


セミナーの様子

 

― 病院で薬をもらう以外にも、睡眠を改善する方法はあるのですね。

日本の不眠症の治療はほとんどお薬を用いますが、海外には、「CBT-I」という睡眠衛生を立て直すことで睡眠を改善する認知行動療法があるんです。

私のカウンセリングも一切薬を使いませんが、「睡眠日誌」をつけ、自分の睡眠を客観的に見ることからはじめて、半年間で睡眠スコアが劇的に良くなった方もいらっしゃいます。

※ 睡眠日誌は、ネムリノチカラ LINE公式アカウントに登録するとダウンロードできるそうです

 

 

布団屋の娘に生まれ、2度の転機を経て「快眠コンシェルジュ」に

 

― ヨシダさんの活動は、これからの日本に必要なものだと思います。ヨシダさんが「快眠コンシェルジュ」になったきっかけを教えていただけますか?

もともとわたしは布団屋の娘として生まれました。当時は仕事を継ぐことなどまったく考えていなくて、この仕事をするようになってから、父には「なんで今さらですか?」と笑われたのですが。

振り返れば、なるべくしてなったのかなと思います。無理したわけではなく、流れに逆らわず。

 

 

睡眠の大切さを身をもって実感したタイミングが2度ありました。

20代の頃、勤めていた会社で、毎日の睡眠が2、3時間という生活を続けていたら、あるとき極度の疲労で前髪の一部が真っ白になってしまったこと。

そしてもうひとつは、40代半ばで母親の介護を経験したことでした。仕事と介護、どちらも大事で時間を削れない。そこで削るのは、自分の睡眠しかなかったんです。

この2つの経験から、人は寝ないとだめなのだな、と実感しました。そして、少しずつ、漢方、健康食、ヘッドスパなど睡眠に関わる勉強をはじめました。

 

― 睡眠の大切さに気づいてから、それを生業にしてしまうのがすごいなと思いました。

勉強をはじめて数年後、過去の自分と同じように悩んでいる人はたくさんいるはずだと思い、会社を辞めて「眠り」の仕事をすることに決めました。なんの道筋もなく、飛び出しちゃったんです。

周りの人には「どうやって食べていくの?」と驚かれました。「分からない」と答えると「バカなの?」って。私も、だれかがそんなことを言っていたらバカじゃないかと思うかもしれません。花屋さんで花を売る、肉屋さんで肉を売る、という商売とはまったく異なる、目に見えないものを扱う仕事ですし。

でも、会社を辞めるときに、これから生きていく上でずっとこの仕事をやっていこう、と決めたんです。

 

― ある意味、別のかたちで、お父様の布団屋さんを継いだのかもしれないですね。

そうですね。父は師匠のようなものです。枕や寝具のことを相談すると、色々教えてくれるんですよ。ふたりでいると、1日中そんな話をしていることもあります。父は、本を出したことも、とても喜んでくれました。

 


“強烈な晴れ女”だというヨシダさん。取材の日は晴天でした。

 

執筆中も「7時間は寝る」と決めて実行しました

 

― 書籍を出そうと思った理由はありますか?

いちど、自分の言いたいことをまとめてみたいと思ったんです。

本には、手に取っていただけることと、伝えたいものが残るという良さがありますよね。それから、著者側の覚悟もあります。

昨年、半年間、出版プロデューサーの城村典子さんの勉強会に参加しました。そこで企画書をまとめて提出し、今年の1月に本を出すことが決まりました。

 

―『眠りのチカラ』は、タイトルのとおり眠りの大切さを伝えるストレートな内容ですが、テーマは最初から決まっていたのですか?

最初は、「笑って寝」という、笑うことと眠りの効能を伝える本を出そうとしていました。ところが、編集の過程で色々意見をいただいて今のかたちになりました。でも、「寝ていない人は幸せになれない」という根底のテーマは変わっていません。

 

― 本に、執筆中も「7時間は寝る」と決めて実行したと書かれていたのが印象的でした。

家に引きこもって本を書いているあいだ、基本的には7時間ちゃんと寝ていたと思います。眠りの本を睡眠時間を削って書くというのはどうなんだろう、と思いまして。

 

― 素晴らしい心がけですね。本ができるまでに、大変だったことはありますか?

書き上げた原稿の順序を入れ替えたり重複部分を削ぎ落とす作業が大変でした。何万字も入れ替えているうちに頭がおかしくなってきて、消してはいけないところを消してしまったりして。編集者の方に「これで合っていますか?」と確認しながら進めました。

 


最終的には、章と章のあいだに動物チャートや101個の睡眠TIPSを挟み、メリハリがあり読みやすい構成になりました。

 

 

寝ないと気持ちもハッピーにならない。だから、みんな寝てね。

 

― 出来上がった本を見て、どのように感じましたか?

私から別の子が生まれた、という感じです。我が子から成長して、ちゃんと商品として立派に仕上げていただいたと感じています。

 

― 発売から1か月ほど経ちますが、周囲の反響はいかがですか?

出版前にFacebookグループ「#眠りのチカラ 刊行記念 みんなの睡眠を底上げする会」を立ち上げたのですが、そこでメンバーのみなさんが、本の情報をシェアしてくださっているんです。「ここで見つけたよ」とか「ここは売り切れてた」とか。それから、本の波及でイベントの登壇の依頼もいくつかいただいています。

 

― ヨシダさんの活動や本を通して、眠りの大切さに気づく人がもっと増えるといいですね。

自分がちゃんと寝てこなかったからこそ、みんな寝てね、と心から伝えられるんです。寝ないと気持ちもハッピーにならない。だから、みんな寝てねって。これからも、伝え続けていきたいと思います。

 

― 今日はありがとうございました。

 

 

 

〈おまけの質問〉

 

 

Q.「ここだけの話」を教えてください

睡眠は、枕では変わりません。みなさん、枕が合わないんじゃないかとよく言うんですけど。布団屋の娘としてもはっきり断言しますが、枕じゃないんです。枕を変える前に、日々の生活を見直してベースアップし、”睡眠偏差値”を上げることで、睡眠は良くなります。

 

 

 

編集後記

「振り返れば、なるべくしてなったのかなと思います」睡眠の仕事をはじめたきっかけを尋ねたとき、そう答えたヨシダさん。ご自身が極度の睡眠不足による体調不良を2度も体験したからこそ、嘘偽りなく、心の底から湧き出すように、睡眠の大切さを人に伝えることができるのだと思います。著書に「天職」と書かれていましたが、ヨシダさんが布団屋さんの娘に生まれたのも、何か運命のようなものなのかもしれません。『眠りのチカラ』は、そんなヨシダさんが書いた初の書籍。睡眠が大切ということは知っているけど、どう大切にすればいいかわからない。そんな人に読んでほしい1冊です。

( 文:笠原名々子 / 写真:洪十六 )

 

 

 

 

 

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