まず言葉はさておき、いちど写真のケーキをゆっくりとご覧になってください。

 

  

 

どれも美しく装飾され、ショーウィンドウに並んでいるような、おいしそうなケーキですよね。

これ、すべて「糖質オフ」のレシピで作られたものなのです!!

こんなに美しく、おいしいケーキが糖質オフなんて、食べても言われるまで気づかない。

どんな魔法でこのおいしさ・甘さを出しているのか…。

そんなスイーツのレシピを次々と生み出し続け、レシピ本『砂糖ゼロでもおいしい!糖質オフの幸せスイーツ』を出版した安田洋子さんに話を伺いました。

 

近年、スーパーやコンビニでよく見かける「糖質オフ」という言葉。

なんとなく体にいいのだろうなという認識はありましたが、生活に取り入れるにはどうすればいいのでしょう。

糖質オフって結局どういうものなの? 甘いものや炭水化物を我慢しないといけないの?

糖質オフのメカニズムや、おいしく食べて、健康で若々しく生きる秘訣を教えてもらいましょう!

 

 

 

話を聞いた人:安田洋子(やすだようこ)さん

 

一般社団法人 糖質オフスタイル協会 代表理事

調理師専門学校を卒業後、お菓子作りを極めるため、ル・コルドンブルーに進むが、大量の砂糖を使うことに疑問を持ち、マクロビオティックのリマ・クッキングスクールにて師範科を卒業。2015年より「糖質オフスタイルcooking」をスタート。3000名以上の方に糖質オフを伝えることで、人々を健康へと導いている。

ウェブサイトhttps://toushitsuoff-style.com/

 

 

 

 

だれかにとっての幸せな食卓をつくりたい。たどり着いた糖質オフ

 

 

まず、安田さんはどのように糖質オフと出会ったのですか?

  10年以上前、主催していた料理教室の生徒さんに、家族が糖尿病を患っているという方がいて、毎日の食事について質問されたのですが、栄養士の知識がなく答えられませんでした。

その後、糖質制限が流行った頃、生徒さんから「ダイエットのためにスタートしたものの、ささみや豆腐、野菜中心で、飽きてしまうし、おいしくない」という声を聞いて、なんとかおいしくて糖質も抑えられるレシピが作れないかと考えはじめました。

 

―毎日の食事だと、いくら健康のためとはいえ我慢できないこともありますよね。特に甘いものって無性に食べたくなりますしね。

甘いものを我慢するのって大変じゃないですか。だからどうにかできないかと思って。

でも、糖質オフのことを何も知らなったので、まずは自分たちが詳しく学ぼうと、栄養コンサルタントの方を招いて、生徒さん達と一緒になって教わったんです。

するとやっぱり糖質の摂りすぎは病気全般と関係があるということがわかったんです。糖尿病はもちろんのこと、認知症、骨粗鬆症、脳血管疾患、心臓疾患などなど…様々な病気の引き金になります。そして、その元凶となる生活習慣病を予防するためには、日々の生活で摂取する糖質の量を抑える必要があるのだと学びました。

そうした知識を得たときに、私も生徒さん達も、これはもう「是非やらねば! みんなに広めねば!」という使命感のような気持ちになり、それで糖質オフスタイル協会が立ち上がったんです。

 


糖質オフスタイル協会のメンバー

 

 

 

正しい知識を持って、自分の中にものさしをつくる。

 

 

―具体的に「糖質オフ」ってどういうメカニズムで体に良いとされているのでしょうか?

本にも詳しく載せているのですが、まずはエネルギーがどのように消費されていくか、というところからお話ししますね。

最初に体に入ってきたエネルギーは糖質→脂質の順番で消費されます。なので糖質をオフすると脂質が消費されやすくなり、体に蓄積されていた脂肪が分解され「ケトン体」というものをつくり出し、それが活動のエネルギーになります。
つまり糖質をオフすることによって、脂肪の燃焼につながるサイクルができるわけです。

 


『砂糖ゼロでもおいしい!糖質オフの幸せスイーツ』より抜粋

 

 

―なるほど、糖質オフをするとダイエット効果があるわけですね。その場合、カロリーはあまり気にしなくていいのでしょうか?

 カロリーを摂りすぎると、もちろん太ります(笑)ただ、脂肪を燃えやすくするために有効なのは糖質オフです。
すべてをやみくもに気にするのではなく、正しい知識を入れて自分の中に「ものさし」のような基準を持つことが大事かなとは思いますね。

そもそも一般的に糖質を間違えて認識している方が多いと思うんです。例えばロールケーキ1切れと塩せんべい2枚だと、どちらの糖質が多いですか? と聞くと、ほとんどの方がロールケーキって答えるんですよ。でも、実際は塩せんべいの方が糖質が多いんです。

「カロリーが多い=太る」という認識を、「糖質が多い=太る」にすり替えていくことが大事だなと感じています。

 


『砂糖ゼロでもおいしい!糖質オフの幸せスイーツ』より抜粋

 

 

―びっくりしました! 糖質というものさしで見てみると今までの世界観が変わりますね。

実は糖質って他にも影響があって、摂りすぎると老けるんです!

 

―えっ! 老けちゃうんですか?

糖質とタンパク質が結びつくとAGE(終末糖化産物)と呼ばれるものができて、細胞を老化させたり、肌のハリを失わせたり、くすみの原因となってしまうんです。

 

― 糖質って摂りすぎると沢山のダメージがあるんですね。安田さん自身、糖質オフによる体の変化を感じたりましたか?

 生徒さんのためにレシピを考えはじめた頃、試作をしていただけなのに、体重がものすごく減ったことですね。それからずーっと体重をキープしていて、20代の頃より今の方が痩せていますし、ずっと維持できているんです。そうなるとファッションとかも楽しめますし、全体的に若返りましたね。

 

 

 

 

健康でいたい、でも味がまずいと続かない。だからこそ、おいしさを極限まで追求したい。

 

 

―糖質オフの知識は、改めて説明をうけて初めてわかったことがいっぱいありました! ただどうやって日々の生活に取り入れればいいのかなと思うところがあります。すごくストイックな食事制限などを連想してしまい、なかなか手が出しづらいなぁと思ってしまいます。


私も糖質オフを学ぶ前はマクロビオティックを勉強していたので、実際に動物性のものを一切摂らないということを試しましたが、かなりストレスが溜まってしまって無理だったんです。
糖質オフも、小麦粉の代わりに大豆粉やおからパウダーを使うレシピなどがたくさんありますが、今まで普通に食べていたものと比べてしまうと、糖質オフの方がおいしい! とまでは思えなかったんです。


―やっぱり「おいしい」って重要ですよね。 

知識として何を食べればいいかはわかっていても、実際に食べてまずいと感じてしまうと、人っておいしいものをたくさん食べたいという相反する欲望が出てくるものだから、結果的に健康的な食事を続けられなくなってしまうんです。

だからこそ私が目指したのは、「健康的」でなおかつ、「おいしさ」をどこまで追求できるかというバランスです。健康にいいからちょっとまずくてもいいや、ではなく、おいしさをとことん突き詰めたいというのが、わたしのこだわりです。

 

―おいしさを極限まで追求して、しかも健康になるなら、お得ですね! 糖質オフでおいしいものを作るというのは、どうやったらできるものなのですか?

例えばスポンジケーキを作るときに、1つの粉だけで小麦粉を代用しようとすると、やはり無理があるということが体感としてありました。そこで試行錯誤を重ねて辿り着いたのが、大豆粉や薄力粉を使った「粉の黄金比率」です。

しかしそれだけではどうしても乾燥しやすかったりします。なので、カロリー0の天然由来の甘味料でシロップを作り、多く染み込ませるといったような工夫をしています。

 

―小麦粉を一切使わないのではなく、おいしさを損なわないように極限まで減らすというのが、従来の糖質オフの本との違いだなと思いました。この本に載っているレシピにはチョコレートや乳製品も使われていて、ストイックすぎないところがいいですよね。

 

 
『砂糖ゼロでもおいしい!糖質オフの幸せスイーツ』より抜粋

 

チョコレートは高カカオを使うぶん、普通のものより苦いんだけど、他の甘味料を補うことによって、チョコレート本来のおいしさを追求してみようと努力しましたね。
乳製品やチョコレートは最低限使って、足りない部分は他の食材を合わせておいしさの「底上げ」をしています。工夫を重ねれば、食材そのものが持つおいしさに近づけて作るということができると思うんです。

ストイックに糖質をオフするのではなく、おいしさのために最低限の材料は使うというかたちで、健康もおいしさも両方を叶えるという、全てのいいとこどりをしようと思っていて(笑) 世の中の人たちが感じている糖質オフへのとっつきづらさに、一石を投じたいと思ってますね!

 

―それは、みんなが望んでいることですよね。おいしくないとなかなか続けられないですからね。

そもそも糖質オフの本を手にとる方って、健康志向のある方だと思うんです。ただ、糖質オフで作るものはまずいというレッテルや先入観があるのは感じていて。

それでも健康的でなおかつ、おいしく食べたいという人は沢山いると思うので、今回、ケーキの見た目や味にはかなりこだわりました。本屋さんで一般のお菓子の本を見る人にも手にとってもらえる本にしたくて。

この本をきっかけに糖質オフに興味を持ってもらいたいという気持ちが大きいですね。

 

 


「糖質オフスタイルcooking」レッスンの様子

 

 

 

糖質オフを多くの人が楽しめるように、仲間を増やしたい

 

 

―今、安田さんの目標や夢はありますか?

今は糖質オフという名前を知らない人はいないし、何かしらの糖質オフ製品を買ったことがある人は多いと思うんです。なので、これからの時代はおいしさやクオリティが要求されていくんだと思ってます。

今、糖質オフスタイル協会には25人ほどの認定講師がいるのですが、私以上に上手な素晴らしいレシピを考える先生たちもいるので、そのレシピをみんなで共有したり、糖質オフ製品を販売する人たちを増やして、社会に広げていくことができたらいいなと思っています。

糖質オフスタイル協会の名前には、糖質オフを”スタイル”できるあなたになってくださいね、という願いを込めています。

私個人だけじゃなくて融合体としてどんどん活躍できる場を増やしていくことで、どんどん世の中に質の良い糖質オフ情報や製品を届けられるんじゃないかなと思っているんです。

 

―みんながそれぞれ糖質オフを”スタイル”して楽しめるように。とても素敵な目標ですね! 今後の活動が楽しみです!

 

 

 

 

〈おまけの質問〉

 

―安田さんは、ふだんの食事はどうされているんですか?

ご飯とか麺を食べるのは1日に1回と決めていますが、それ以外は好きなだけ食べています。でも毎回作るのが面倒になるので、鍋に食材を一気にバッと入れて煮込んでおかずにでも主食にもなるものを作っちゃうことが多いです(笑) 麺とか小麦粉を使っているものは喉越しがいいから、やっぱり食べたくなるので、そういうときは麺を半分キャベツに置きかえて焼きそばを作ったりしていますね。あと、本に載せているスナック菓子も、普段から間食としてよく作っています。

 

 

 

―私もあのレシピを作りたくなりました! お酒のつまみにしたいなと思って(笑)

残念! 実は体に入ったエネルギーは、糖よりアルコールを優先して代謝するので、結果的にアルコールを摂ると痩せないのよ! 晩酌するなら、ノンアルコールで糖質0のものにしてみてくださいね(笑)

 

 

 

 

( 文:南田美紅  )

 

 

 

 

《 本について  》

砂糖ゼロでもおいしい! 糖質オフの幸せスイーツ
著者 一般社団法人 糖質オフスタイル協会 代表理事 安田洋子
これが糖質オフ!? 信じられないほどおいしい「糖質オフスイーツ」レシピ