青山裕企賞・アート部門最優秀賞をW受賞した徐引子さんの作品

 

 

みらいパブリッシングが提携している写真のコンテスト「写真出版賞」。

第4回の開催を終え、ここからまた新しい才能が、出版を通して世に羽ばたこうとしています。

 

今回、青山裕企賞・アート部門最優秀賞をW受賞した、中国出身の徐引子さんの作品「閃光」。

この作品について、審査員を務めた青山裕企さん・則武弥さん・城村典子さん、そして当社の社長松崎の4人が審査後に話していた裏話を、「楽屋裏トーク」としてこっそり公開します。

 

※ このトークは正式な講評ではなく、あくまで審査後の自由な会話のやりとりをもとに構成したものです。

 

 

 

《 審査員たちのプロフィール 》

  

 青山裕企(Mr.Portrait / 写真家)

『ソラリーマン』『スクールガール・コンプレックス』『少女礼讃』など、 “日本社会における記号的な存在”をモチーフにした作品を制作している。 写真出版賞では第1回から特別審査員を務める。

ウェブサイト https://yukiao.jp

 

 

則武弥(デザインディレクター)

ペーパーバッグ代表。CI、VI、教科書のデザイン他、「典型プロジェクト」でのプロダクト開発、詩のデザインレーベル「oblaat」、「東京ピクニックラブ」で活動。グッドデザイン賞他受賞多数。写真出版賞では第1回から審査員を務める。

ウェブサイト https://www.paperback.jp/

  

 

城村典子(出版プロデューサー)

講談社、角川学芸出版などの出版社に勤務した後、2012年に独立。書籍編集、角川フォレストレーベル立ち上げと編集長などの業務のほか、事業部の立ち上げ、出版社創設など、出版事業全般に渡る業務を30年経験。スプリングインク株式会社代表取締役として、コンテストの運営も行う。写真出版賞では第1回から審査員を務める。

  

 

松崎義行(みらいパブリッシング代表取締役 / 編集者 / 詩人 / 作詞家)

本賞の提携出版社みらいパブリッシングの代表取締役。15歳で第一詩集「童女 M-16の詩」を刊行。以来、詩、作詞、エッセイ、編集など出版や表現に関わる多数の活動を行っている。写真出版賞では第1回から審査員を務める。

 

 

 

 

 

 

 

僕の影響も1%でも入っていたらうれしいな

 

青山:

特に国籍で選んでいるわけではないけど、毎回、中国出身の方を青山裕企賞に選んでしまっている気がします。

 

則武:

この作品には、撮っている人と映っている人の関係の良さが出ていますよね。

 

青山:

川島小鳥さんの影響を受けているんじゃないかなという気がするのですけど。次世代の川島小鳥、みたいな。女の子の写真だけじゃなく、カップルや姉妹を写したものなど、いくつかテーマに分かれていましたが、最後の「群像写真」のシリーズを見ると、ここからさらに成長する余地を感じます。日本でもすぐに仕事ができるくらいのレベルだと思います。川島小鳥さんの影響のほかに、僕の影響も1%でも入っていたらうれしいな、なんて。出版したら、きっとすごくいい本になるでしょうね。ぜひ、本で見てみたいです。

 


特別審査員を務めた写真家の青山裕企氏

 

 

 

 

見る者をそわそわさせる、姉妹の関係

 

 

松崎:

僕がとくに印象深かったのは、姉妹を撮った写真です。お互いのライバル意識が見えたのが良かったですね。写真家との関係より、姉妹の関係が濃く出ていた。写真家も含めた3人の関係が三角形にみえて、安定を感じました。この姉妹を中心に本としてまとめると面白いかなと思いました。

 

城村:

姉妹の写真はたしかに面白かったですよね。女性同士しかわからないものが写っているような気がします。

 

松崎:

川島小鳥さんの写真を初めて見たとき、遠いのか近いのかわからない感じがしたんです。こんなフォーカスの撮り方見たことないなって。『BABYBABY』という写真集だったと思うのですが。ふたりは付き合ってるのかいないのか、そわそわする感じ。この姉妹も、そういうそわそわを感じさせる作品で。よくこの姉妹をこういうふうに撮れたなと思いました。

 


審査員に強い印象を残した姉妹の写真

 

青山:

切り口によって、どんな本になるかが変わってきますね。実際、応募時の演出も、よく考えられているなと思いました。紙の風合いがけっこうマットで世界観をつくっているし、テーマごとにタイトルがついていたり、ナンバリングされていたり。

 

則武:

どういうふうに提出するかというプレゼンテーションはけっこう大事ですよね。僕は審査するとき、評価基準のひとつにしています。

 

 

 

 

中国の表現は、解き放たれている

 

 

松崎:

この賞は、歴代中国の方の受賞が続いています。やっぱり何か理由があるのかな。シーンが日本から中国に移っているのかもしれない。日本はもう盛り上がったあとで、同じものをつくれない。プライバシーとかプライドとか、自分たちがつくった規制や既成概念に囚われてしまっているのかも。中国はそういうのから解き放たれているから、こういう日本人からすると気恥ずかしくなるような表現ができるのかもしれない。いい時代ですね。

 

青山:

今まで選んだ中国の方たちの作品は、抑圧されたなかで生まれた表現という雰囲気が出ていましたが、この作品はとにかく明るくて、はつらつとしていますよね。

 

 

則武:

中国の方って、ウェディングフォトとかもそうですが、これでもかというくらいみんな写真を撮るじゃないですか。そういう気概をこの作品からも感じました。撮り合いをしている感じ、フォトジェニックな感じが最後まで続いている。枚数に負けていない感じがいいなと思いました。

  

城村:

提出方法も含めて、気持ちよかったですよね。一環していて、美意識が伝わってきました。

 

則武:

僕らが20代の頃、撮る側も撮られる側も、「撮ってる」「撮られる」という意識があったじゃないですか。今はそんな意識もなく自然に撮っていて、もう世代が違うんだなと思いました。音楽に近い感じ。若い人がジャズの歴史や文化も知らずにジャズを奏でている。でもその音がすごくいい、みたいな。

 


応募枚数は約300枚。最後まで惹きつけられました

 

 

 

 

 

以上、第4回写真出版賞で青山裕企賞・アート部門最優秀賞をW受賞した徐引子さんの作品「閃光」についての、青山さんと審査員のみなさんの楽屋裏トークでした。

徐引子さんをはじめ、中国の若手写真家たちのこれからの活躍が、本当に楽しみですね!

 

 

写真出版賞については、こちらのサイトをご覧ください。