この記事について
絵本の読み聞かせは、読み手から聞き手への【お話の贈り物】。
読み手の読み方次第で、物語は、まるで風船を膨らませるように広がっていきます。
絵本『大みそかに、じかんがじゃんけん大会』の作者であり朗読家でもある北島多江子さんが、読み聞かせのコツを教えてくれました。
絵本の読み聞かせは、子どもから大人まで、一緒に楽しめる絵本時間として人気がありますが、その一方で【絵本の読み方】のお悩みが少なくないようです。
「この読み方で、合っているのかな~?」
「思っていたより、反応が返ってこない…」
「絵本の選び方ではなく、読み方が違うのかな…???」
このようなお悩みが、少しでも解消されるように【もっと伝わる読み聞かせ】のポイントをまとめてみましたので、参考にしていただけたら幸いです。
①【表紙のタイトル】と【扉にあるタイトル】の読み方
「えっ? そこから???」と思われる程、意識されている方は少ないかもしれません。
タイトルを2度、もしくは3度読むことで、徐々にお話の世界へ誘う大事なポイントです。
※ 表紙のタイトル ⇒ 扉のタイトルは、表紙のタイトルより、少しゆったり読みます。
※ 読むスピード&声のトーン ⇒ 1見開きの最初の行に合わせるように読みます。
表紙
見返し
扉
1見開き
表紙から見返し、そして扉までの間は、スロープをイメージしながら、ゆっくり丁寧にページをめくると、お話がはじまるわくわくが高まりますよ。
タイトルの読み方も、1見開きの1行目の読み方に合わせていくことで、すっとお話の世界に入っていくことができます。
タイトルは、【お話が始まる合図】なので、お話の内容に合わせて読みましょう。
(例) 冒険のお話 ⇒ 元気に明るい声で読みましょう。
(例) 悲しいお話 ⇒ 声のトーンを抑えて、しっとり読みましょう。
② 1秒で、意味が変わる? 間の取り方について
読み聞かせでは、【間の取り方】 で、お話の伝わり方だけでなく、意味まで変わってしまいます。
それでは、どのように変わるのか、次の例を読み比べてみましょう。
絵本【おおきなかぶ】より
「うんとこしょ どっこいっしょ」 ⇒ 間を取らずに、繋がるように読むと、ひょいっと抜けるようなかぶになります。
「うんとこしょ 〇 どっこいっしょ」 ⇒ 間をしっかり取って、セリフを伸ばすように読むと、なかなか抜けないかぶになります。
このように、間を取る事で大きさだけでなく、下記のように大きく変わるのです。
・間を長く取る ⇒ 時間の長さ・距離が遠くなる・物が大きい等
・間を短く取る ⇒ 時間の速さ・距離の短さ・物が小さい等
間の長さが分かりづらい時は、まずご自身の間の取り方を基準にして、長くしたり短くしたりして、より伝わる長さを決めていきましょう。
数字のカウントダウンだったら、どのように読むのがわくわくするでしょうか
③ 1秒で、場面が変わる? ページのめくり方について
ページのめくり方は、1秒遅くなっただけで、ふっと現実に戻ってしまうほど、とても大事なポイントです。
そして何より、場面展開のわくわく感が高まるのか、あっと驚くのか等、お話の伝わり方を左右すると言っても過言ではないのです。
例えば、次のページで恐竜が、「うがぁ~!!」と襲いかかる場面だとしたら、どのように読みますか?
通常では、ページをめくってから、1行目の「うがぁ~!!」を読むと思います。
しかし、【もっと伝わる読み聞かせ】では、ページをめくりながら、1行目の「うがぁ~!!」を読んでしまいます!
「えっ? ページをめくりながら???」と、不思議に思われるかもしれませんが、【ページをめくってからでないと、読んではいけません】という決まりはないのです。
通常の読み方では、恐竜が襲いかかろうとする場面を見てから、ワンテンポずれる形で、「うがぁ~!!」のセリフを聞くことになります。
勿論それが間違いというわけではありませんが、より聞き手が驚いて、恐竜の迫力と大きさを感じられる読み方は、どちらだと思われますか?
このように、ページのめくり方や読み方で、内容の伝わり方が大きく変わります。
みなさんだったら、この場面をどんなふうに読みますか?
次に、変身など場面展開が一気に変わる場合は、勢いよくパッとページをめくります。
まるで、オセロをひっくり返すように、一瞬で場面が切り替わるようにめくると、変化の前後に驚きが増すのです。
通常は、本文を読み終えてから、一呼吸置いてからめくります。
その場合、先程と同様に変身した様子を見てから、「じゃ〜ん! ◯◯に変身しました」と聞くことになりますので、驚く ⇨ 知る ことに半減してしまうのです。
なので、パッと勢いよくページをめくりながら、「じゃ〜ん!」を読み、めくり終わると同時に、「◯◯に変身しました」と読むと、変身した様子がより伝わります。
絵本の読み聞かせは、読み手から聞き手への【お話の贈り物】だと思うのです。
びっくり箱を開けるほど、驚かせるわけではありませんが、作者が絵本に込めた想いや描かれた場面が、まるで風船を膨らませるように、読み手の読み方次第で、お話の世界をどこまでも旅することができると思うのです。
長年の読み聞かせボランティア経験と作者としてのオリジナル視点の読み聞かせメソッドが、さらに読み聞かせが楽しくなるようにお役に立てたら嬉しい限りです。
《 プロフィール 》
北島多江子 こころ絵本作家&朗読家
絵本講座・読み聞かせ養成講座講師、紙芝居・
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《 北島多江子さんの本 》
『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』
著者 北島多江子
じかんもおばけもやっぱり1ばんがすき!