その悩み、AIで大丈夫ですか?
〜AIに相談していい悩み・いけない悩み〜
著者川北 輝
価格 1870円(税込)
四六判 176ページ ソフトカバー
2026年10月27日 ISBN978-4-434-38711-1
みらいAIに相談したくなるあなたは、何もおかしくありません。
大切なのは「頼るかどうか」よりも「どう頼るか」です。
「今まで誰にも言えなかったことを、AIには話せました」
そんな経験をする人が、急速に増えています。米国では、思春期から若年成人のおよそ5人に1人が、心の健康についてAIに助言を求めた経験があります。
学生の間では、ChatGPTを「チャッピー」と呼んだり、AI彼氏・AI彼女をつくったりする姿も見られます。
深夜でも否定せず、急かさず、感情的にもならずに話を聞いてくれるAIは、今や友だちよりも身近に感じられる存在なのです。
一方で、その悩みをAIだけに任せてもよいのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
本書が伝えたいのは、AIは悩みを相談する「入口」にはなれても、まだ解決へと導く「出口」にはなれない、ということです。
著者は、公認心理師であり、メディアアーティストであり、京都芸術大学の専任講師でもあります。
臨床心理学と知識科学の2つの修士号を持ち、人とAIの関係を研究しながら、大学の教室で若い世代がAIを使う様子を日々見つめています。
本書は、AIに相談することを「責める本」ではありません。第1章で伝えるのは、「AIに相談したくなるあなたは、何もおかしくありません」というメッセージです。
人間よりもAIのほうが話しやすいと感じる背景には、人に話して傷ついた経験があることも少なくありません。
その気持ちに寄り添いながら、AIに頼れることと、人の助けを借りたほうが良いことを丁寧に分けて考えます。
たとえば、命や安全に関わる悩み、眠れない・食欲が落ちた状態が何週間も続く場合、薬についての判断、法律やお金に関することです。
こうした「ここから先は人に相談したい」という領域を具体的に示します。あわせて、AIへの依存を見分けるチェックリストや、入力前にプライバシーを確認するための項目も紹介します。
「上司の〇〇が」ではなく「上司が」と書くこと、共有端末ではログアウトすることなど、日常の使い方に沿った細やかな説明も本書の特長です。
AIへの頼み方がわかるよう、そのまま使えるプロンプト(AIへの質問や依頼の文)の例も、全編にわたって紹介しています。
「考え方が極端になっている可能性はありますか。別の見方を4つ挙げていただけますか」
「カウンセリング先を探しています。ホームページを見るときに確認すべき項目を、資格、料金、相談内容、連携、注意点に分けて教えていただけますか」
このような例を通して、AIとの対話をどう役立てるかを考えられます。
さらに第5章では、言葉にしにくい気持ちを、文章・画像・音楽の生成AIで表現するセルフケアを取り上げます。
芸術療法の流れを踏まえて心のケアを考える、本書ならではの章です。
イライザ効果、メディア・イクエーション、弱いロボット、コーピング、確証バイアスといった心理学や情報工学の考え方も、実例を交えながらわかりやすく解説します。
「生成AIの使い方」の本は現在多数出版されていますが、本書はそうしたハウツー本ではありません。
本書は、AIと人間の関わり方の可能性や限界を様々な角度から考察した一冊となっています。
目次
第1章 なぜ人はAIに相談したくなるのか
第2章 AIに相談しても良い悩みと向いている使い方
第3章 AIに相談しない方が良い悩み
第4章 専門家につながるという選択肢
第5章 心を表現する——アートとAIの可能性
第6章 AI相談の未来
編集者からのコメント
・生成AIの活用を紹介する本は、数多く出版されています。そのなかで本書が考えるのは、「AIで何ができるか」よりも、「AIに何を預けてよいか」です。
使い方を知るだけでなく、どこまで頼るかを自分で判断するための本として企画しました。
・著者は、国家資格である公認心理師の資格を持ち、感性工学・HCIの研究者として、またメディアアーティストとしても活動しています。
この3つの立場をあわせ持つ書き手による一般書は、日本語で読める本のなかでも、とても珍しいものです。
・著者にとって、転機となったのはコロナ禍でした。公認心理師の登録者数は、2026年3月時点で約7万5千人です。
一方、厚生労働省の患者調査による精神疾患の総患者数は、600万人を超えます。
目の前の一人を支えることはできても、その外側には、助けを求める声を上げられない人が数多くいます。
この数字の隔たりと、そこにある課題への思いが、本書を届ける理由になっています。
・研究結果の伝え方も丁寧です。生成AIを使ったセラピー用チャットボットの無作為化比較試験で得られた成果を紹介するとともに、試験期間の短さ、比較対象の問題、重症例では未検証であることも明記しています。
また、「検証済みAI」「ウェルネスアプリ」「汎用AI」の3つの層を取り上げ、最も検証が進んでいない層が、最も多くの悩みを受け止めているという状況を指摘します。
・本書全体の土台には、著者が提唱する「感性インフラストラクチャー」という考え方があります。
火が味覚や夜の時間感覚を変え、電球が暮らしのリズムを変えたように、AIもまた、人の感性を変える環境として捉えています。
AIへの相談を一時的な現象として見るだけでなく、テクノロジーと感性の歴史のなかに位置づけることで、これからの人とAIの関係を長い目で考えられる一冊になっています。
川北 輝(かわきた てる)
公認心理師/メディアアーティスト・現代美術家/京都芸術大学 専任講師
1998年生まれ、広島県出身。大学で心理学を3年で修め早期卒業し、専門職大学院で臨床心理学の修士号を取得。
その後、情報系の大学院に進み知識科学の修士号を取得する。臨床心理修士(専門職)、修士(知識科学)。
コロナ禍に対面一対一のカウンセリングの限界を痛感したことを転機に、より多くの人へ心理的支援を届ける方法を求めて研究の道へ。
25歳で短期大学の助教に就任すると同時にメディアアーティスト・現代美術家としての活動を開始する。
現在は感性インフラストラクチャー研究室(KIL)を主宰し、人の感性を持続的にアップデートする社会的基盤「感性インフラ」の実現を掲げて、研究・アート・教育を横断して活動している。
AI、VR、ロボットなどのデジタル技術が人間の感性や心理体験に与える影響を、感性工学とメディアアートの両面から研究。
2020年よりカウンセラーエージェント(AIによる相談相手)の研究を継続している。
研究成果は査読付き論文に加え、国内外の学会で広く発表。個展「川北輝のメディアアート展 in MIYAKO」(2025年、岩手県宮古市民文化会館)など、作品発表も行う。本書がはじめての著書。
第23回日本感性工学会大会 優秀発表賞、日本デザイン学会第72回春期研究発表大会 グッドプレゼンテーション賞、2023年度笹川科学研究奨励賞(日本科学協会)、AHFE 2024 Best Student Paper Award、第3回デジタルとくしま大賞 大賞(徳島県知事)、第2回インフォメーション・ヘルスアワード 特別賞(NHK財団)を受賞。
Instagram:@teru_kawakita
















