この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

毎月2回、月はじめと中頃に、コメントと未発表の詩を公開していきます。

今回はX’masの詩をおまけにひとつ。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

・・・・・・・

 

 

2020年も残りあとわずか。

この1年は新型コロナという未知の感染症との闘いの年でした。

残念ながら、闘いはまだしばらく続きそうです。

どうか皆さま、それぞれに、よいX’masを! 

今回はX’masの詩を一つおまけにお届けします。

 

 

 

 

「パスポート」

 

詩集を
鞄に入れて
歩いていく

晴れの日も
雨の日も
雪の日も

詩集が
明日への
パスポートであるかのように

 

 

 

「友達」

 

友達が
成功して
輝いているときは

黙って
遠くから
眺めていればいい

友達が
無一文になり
輝きを失ったら

会いに行って
コーヒー飲もうよと
言えばいい

 

 

 

 

「星の交換」

 

光らなくなった
古い星を
新しい星と
取り替えて
スイッチを
指先で弾くと
星が明るい光で
暗闇を照らし出す

ねえ
トイレの電球
換えてくれた?

うん
換えたよ

 

 

 

 

「下り坂」

 

まだ
華やかな日々を
望むのだろうか

人生の
下り坂にも
いい眺めは
たくさん
用意されているのに

 

 

 

 

「使者」

 

ニューヨークの
ロックフェラーセンタービルに飾る
クリスマスツリーの中から
小さなフクロウが見つかった

フクロウは
「ロックフェラー」と命名され
森へ帰された

まさか
クリスマスツリーが
フクロウの家だなんて
思わなかったのだろう

フクロウに
ごめんなさいと
謝ったのだろうか
キミの大切な家を
伐り倒しちゃって、と

人の幸せも
フクロウの幸せも
ともに祈りたい
一日も早く
「ロックフェラー」に
新しい家が見つかりますように

 

 

 

 

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谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

 

 

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《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート