この連載について
こんにちは、みらいチャンネル編集長の笠原です。
読まなくても、本のそばにいると落ち着きます。
この連載では、
今日おすすめする本
タイトル:『生き物の死にざま』
著者:稲垣栄洋
出版:草思社 /2019年
人間の基準で悲しみを感じることに疲れて、まったく知らない価値観で成立する異世界に触れたくなる。
悲しい状態が続くと、人はそんな気持ちになってくるものなのでしょうか。
とにかくわたしはその日、何かとんでもない設定のSF小説でも読みたいな…と思いながら本屋に行きました。
そこで見つけたのが、この本です。
「カズレーザーがオススメしていました」
そんなポップとともに平積みされていて、シリーズ2作目も出ているようなので、人気の本であることが伺えました。
それにしても『生き物の死にざま』ってすごいタイトルだな…。
手に取るのは少し勇気が要りましたが、これもある意味SF小説のようなものかなと思い、買ってみることにしました。
果たして、その予感は大正解でした。
この本では、様々な昆虫、魚類、ほ乳類、微生物の生態をエッセイで紹介しています。
図鑑とはまた違った読み心地で、まるで虫や魚が主人公の小説を読んでいるようです。
カフカの『変身』を読んだときのような読後感があった、と言ったら言い過ぎでしょうか。
たとえば、クラゲの章はこんな問いかけではじまります。
「クラゲはいったい、何を考えているのだろう。」
そこにチャップリンの名言も引用されます。
「クラゲにだって生きがいはある。」
そんな導入で、5億年前から存在したクラゲという不思議な生き物の生態に迫っていきます。
生まれたときはプランクトンで、不死身の種もいるという、人間とまったく異なる生命体クラゲ。
そんなクラゲに感情移入するのは普通むずかしいと思いますが、この本に導かれると簡単にできてしまいます。
クラゲの他にも、こんな生き物たちが紹介されています。
オスの体が、血液も内臓もすべてメスの体に同化していき、やがて2尾でひとつの生き物になってしまうチョウチンアンコウ。
産まれてきた子供のために、自分の体を食料として差し出すハサミムシ。
永遠に老けない、ハダカデバネズミ。
彼らの生きる姿勢や死生観は、あまりにも人間とかけ離れているように思います。
同じ「地球に生きる」でも、こんなに違いがあるとは…。
そんな彼らの生き方を見つめているうちに、気づいたら「自分はどうなんだろう」と自分に立ち返っていることが何度かありました。
人間と話し、人間の考えを知るだけでは気づけないことに、たくさん出会える本です。
思考が行き詰まってしまっている人におすすめしたいです。
・・・おまけ・・・
撮影で使わせてもらった喫茶店はこちらです。
入った瞬間、静かです。
静けさが必要なときは行ってみてください。
穂高
Googleマップ:https://goo.gl/maps/xtGYbZywA9bBQA6g8
最寄り駅:JR御茶ノ水駅など
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プロフィール
みらいチャンネル編集長 笠原
フリーランスライター、ホテル勤務を経てみらいパブリッシングに。2020年からみらいチャンネルの編集長。映画を観るのは苦手だけど本は好き。
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webkikaku@miraipub.jp
イラスト提供:草成(くさなり)
島根県生まれ。絵本作家、イラストレーターとして活動している。
第2回絵本出版賞で2部門同時受賞を果たし、現在計3冊が発売されて人気を博している。
『植物界』大人向け絵本部門最優秀賞(ポエムピース)
『おすしときどきおに』審査員特別賞(みらいパブリッシング)
『ねことおばあさん』(みらいパブリッシング)