詩人・谷郁雄の日々の言葉 35

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By 編集部 / 2022.05.14

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

ベランダの鉢植えのミカンの葉っぱにアゲハ蝶が卵を産み付け、そいつはいま4センチくらいの大きな青虫になり葉っぱをムシャムシャ食べています。

虫嫌いの人には申し訳ないですが、とてもかわいらしいやつです。

これからサナギになりきれいなアゲハ蝶に変身するでしょう。

楽しいことも悲しいこともごちゃまぜにして日々はくり返します。

そんな日々から生まれた詩を4つお届けします。

 

 

 

「地下鉄」

 

身体は
すきまもなく
くっつき合って
座っていても
心は遠く
はるかに
隔てられている

 

床を
ビールの缶が
ころころ
転がっている

 

缶を
見つめる
みんなの心が
遠くから帰ってきて
缶を中心に
一つの円になる

 

 

 

今日が

 

いま
笑うのは
またいつか
泣くから

 

今日
青空を見上げるのは
明日は
雨かもしれないから

 

今日が
人生最後の日でも
私は
学校に行くだろう

 

好きな男子に
好きですと
言えないままで

 

 

 

 

これから
どうしようか
自分が自分に
問いかける

 

これまでと
同じでいいさ
自分が自分に
返事する

 

雲は
そうして
空を旅する
まるで
心を持っているかのように

 

 

 

友達の見つけ方

 

人生の途中で
たまたま
縁あって
出会えた人たちを
心の宝物として大切にしよう

 

人生の
夕暮れは
思いのほか
早く訪れる

 

友達の
見つけ方は
教科書には
書いてない

 

教科書を
家に忘れて
君に教科書を
見せてもらっている
やせたその子が

 

君の
一生の
親友になるかもしれない

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

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《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

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