詩人・谷郁雄の日々の言葉 34
この連載について
日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。
詩人の谷郁雄さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。
2週間にいちど、ここでお会いしましょう。
・・・・・・・
つい最近、スマホデビューして、noteでも詩の連載を始めまし
「谷郁雄の詩のノート」というタイトルをつけました。
それで
同じ詩が
では皆さま良い連休をお過ごしくだ
「青アザ」
一人でいると
自分が
小さな世界の中心
世間に出ると
自分も
大きな世界の一部
中心にいるのが
心地いい日
一部になるのが
気持ちいい日
今日も
世間の風に
吹かれて歩こう
やわらかな心に
青アザ作りながら
「缶コーヒー」
自販機から
ホットコーヒーが
姿を消した
木々は
つややかな若葉を
風にそよがせ
道行く人も
薄着が目立つ
ホットコーヒー好きには
一抹の
寂しさと悔しさが
心の中に残る
でも
やっぱり
コーヒーが飲みたい
アイスコーヒーで
心を満たそう
小さな缶を
傾けて
見上げる空は
失くしたものや
忘れたことを
やさしく隠してくれている
・・・・・・・
《 谷郁雄さん プロフィール 》
1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。