詩人・谷郁雄の日々の言葉 25

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By 編集部 / 2021.11.20

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

先ほど、大谷選手の万票でのMVP 受賞が決まった。

すごいことがあっさりと実現した。

大リーグの歴史が変わった瞬間、それを現実にしたのが日本人選手。

落ち込んだ日々もあったというけれど、晴れやかな笑顔の大谷選手に、遠くからおめでとうを言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

「地球」

 

遠い宇宙から
眺めれば
地球は青く
美しい星

地上には
ゴミや
死体が
転がっている

人々は
日々に疲れ
青く美しい
星のことを忘れる

宇宙の中で
宝石のように
青く輝く
星の一部である幸せを

 

 

 

「光と影」

 

他人を
思いやる
やさしさは
忘れたくない

けれど
ぼくの心は
そんなに
大きくはない

小さな袋に
物を詰めこめば
袋は簡単に
破れてしまう

いま
どこかに
悲しんでいる
人がいたとしても

元気に
笑って
生きていくことしか
ぼくにはできない

そうして
世界を回していく
いま 悲嘆に
昏れている人たちとともに

 

 

 

「あなたの物語」

 

サヨナラから
始まった
物語の続きを
いまあなたは
生きている

小さなことで
泣いたり
笑ったり
しながら

つらくても
生き続ける
宿題を
自分に課して

いつか
再び
訪れる
はじめましての
喜びを
かみしめる日のために

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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インタビュー

 

《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート