詩人・谷郁雄の日々の言葉 24

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By 笠原名々子・nanako / 2021.11.06

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

昨日、やっと3つめの詩が書けました。

ぼくが小学生のときの詩。

校庭でのフォークダンスの練習風景を描いています。

照れ臭いような、胸がドキドキするような、甘酸っぱい時間。

そんな人生のささやかだけど忘れ難い一コマ。

好きだった女子も、ショートヘアのバアバに変身していることでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

「条件」

 

生きることは
楽しい
ただし
条件付きで

条件は
ただ一つ

楽しいと
思えるような
生き方を
自分で見つけること

悩み
迷い
苦しみながら

 

 

 

 

「2021年11月3日」

 

たいくつに
くり返す日々も
小さな
新しい出来事に
彩られている

だから
つらいことや
悲しいことが
あっても
人は
物事の明るい面に
目を向けようとするのか

どんな日にも
日付がある
日付とは
その日に与えられ
人に記憶されるための名前

(今日は2021年11月3日)

そうして
人は
日々に
親しみを持つのだ
心に
日付を刻むことで

 

 

 

「フォークダンス」

 

くるくる
回転する
フォークダンスの
大きな輪

校庭を
陽が照らし
音楽が
風に舞う

好きな
女の子は
ショートヘアの
利発な女子

はじめて
ふれた
その子の手
冷たくて
やわらかかった

男子は
みんな
思っていた
女子も
みんな
気づいていた

先生だけが
知らないふり
腕組みをして
回転する輪を
見守っていた

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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インタビュー

 

《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート