詩人・谷郁雄の日々の言葉 -21-

連載
2021/09/25

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

この連載を始めるとき、2週間ごとの詩の更新なら余裕かなと思っていましたが、間違いでした。

でも、なんとか連載を休まず継続できています。

皆さんも気軽に感想をお寄せください。

この連載から生まれた詩集『詩を読みたくなる日』が好評発売中なので、読んでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

「隔世」

 

スマホと
SNSで
世渡りする
令和の若者たち

公衆電話と
郵便ポストが
親しい存在で

目の前の
人の心を
信じるしかなかった
昭和の若者の
一人だったぼく

 

 

 

 

「王子様」

 

女は思う

いつか
王子様のような
素敵な男にめぐり合う

あれから
四十数年
王子様は
年老いて
メッキが剥がれ落ち
人生に疲れて
ソファに寝ころんで
現実から
ずり落ちそうになっている

王子様を
こんな姿に変えたのは
時間の魔法

女は
タオルケットを
そっと
王子様にかけてやる

開けた窓から
ひんやりとした
秋風が流れ込む
お城の一室で

 

 

 

 

「目薬」

 

両目に
目薬
たらしたら

涙が一粒
頬を伝って

ぼくは
あの日に帰る

はじめて
組み立てた
ゼロ戦の
プラモデル

父の
おしりが
圧し潰し
長い戦争が
終わった日

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

《 関連リンク 》

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インタビュー

 

《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート

 

 

 

 

 

 

2021.09.25

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