この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

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今日、ラジオでは、「夏の終わり」特集とかで、夏の終わり気分を演出するような曲ばかり流しています。

でも、今日の東京の最高気温は35℃。

夏の終わりの気配さえありませんが、それでもやはり秋は少しずつ近づいているのでしょうか。

あちこちに、夏の忘れ物のようなセミの亡骸がごろりと横たわっていたりします。合掌。

 

 

 

 

 

「宿題」

 

ぼくが
使い捨てた
鉛筆の総量は
大きな木一本分

毎日
鉛筆を削り
これまで
たくさんの詩を
書いてきた

徒労にも
似た行為だと
言う人もいる
自分でも
そう思うときがある

小さな野心のために
大きな木を一本
犠牲にして
ぼくは
生涯を終えるだろう

勉強嫌いの
ぼくに
課せられた
終わりのない
日々の宿題

 

 

 

 

「小石」

 

人生は
一回だけの
夢のようなもの

生まれ変わりたいとは
思わない

けれど
前世の記憶を
消されて

何万回も
生まれ変わり

川底を
流されていく
小石のように

時間の旅を
続けているのかもしれない

 

 

 

 

「神さま」

 

神さまは
いるかもしれないし
いないかもしれない

けれど
君には
友達がいる
好きな人も
いるかもしれない

神さまが
いなかったときのために

 

 

 

 

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谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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インタビュー

 

《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート