この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

身近な人が何人かコロナ陽性になりました。

自宅で亡くなる人も増えているようです。

コロナは静かに確実に広がりつつあります。

どうか、みなさん気をつけて。

いつも夏になると詩が書けなくなります。

小さな詩の兆しを見逃さず、なんとか3つ書きました。

 

 

 

 

 

「アイス」

 

日々
あたりと
はずれが
あった

あたりが
出ると
もう一本
アイスがもらえ

はずれが
出ると
悔しい気持ちが
もらえ

あたっても
はずれても
友達は
笑顔で見守ってくれた

 

 

 

 

「言葉」

 

愛という言葉が
独り歩きしている
幸せという言葉も
独り歩きしている
明日という言葉さえ
独り歩きしていく

私を
置き去りにして

 

 

 

 

「世代」

 

同じ時代を
生きていても
ちがう季節を
通りぬけている

同じ空を
見上げていても
見上げる心は
はるかに遠い

同じ道を
歩いていても
夢見る未来は
別の世界

ああ
そして

同じ本を
ぼくらはひらき
隔たりながらも
つながり合っている

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

《 関連リンク 》

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インタビュー

 

《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート