この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

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オリンピックに反対でしたが、毎日テレビでオリンピック観戦です(笑)

日本人の金メダルが決まるたびに、何度も同じシーンがくり返されるので、「一度でいいよ」と思ったりしています。

ぼくの詩集が昨日発売になりました。

鈴木千佳子さんのブックデザインが奇跡のように素敵です!

また、笠原名々子さんによるぼくのインタビュー記事もみらいチャンネルに掲載されました。

読んで笑ってください。

 

 

 

 

 

「笑み」

 

目の前で
笑みを浮かべている人も

心では
泣いているかもしれない

他人の
悲しみにふれる
勇気も
やさしさも
ぼくにはないので

その人の
やさしさに
甘えている

 

 

 

 

「写真」

 

子供のぼくと
いまのぼくが
よりそって
笑っている

子供のぼくは
未来を見ていて
いまのぼくは
過去を見ている

二人で
一人のぼく

やがて
扇風機の風が
二人を吹き飛ばし
はなればなれにしてしまう

ちぎれた
鳥の翼のような
二枚の写真

 

 

 

 

「先生」

 

強さや
知識や
才能は
生きるうえでの
武器になります

けれど
他人を思いやる
やさしさだって
武器になります
と先生は言った

先生は
生徒たちに
愛されていたが
出世コースからは
大きく外れていた

 

 

 

 

 

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谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

《 関連リンク 》

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インタビュー

 

《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート