この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

毎月2回、月はじめと中頃に、コメントと未発表の詩を公開していきます。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

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いま、オリンピック開催の是非が、盛んに議論されています。

ぼくは昭和39年の東京オリンピックのときに小学生でした。

あのときは日本中が熱狂していました。

悪ガキだったぼくは不良ジジイになり、2回目の東京オリンピックを目前に何を思っているのでしょう?

 

 

 

 

 

「祝家出」
   今日子に

 

思うところがあって
家を出たのだろう
新しい自分と出会う
旅に出たのだろう
より困難な道を歩く
覚悟ができたのだろう

けれど
君は一人じゃない
暮らしを共にする
異性を見つけたのだ

築四十年の
小さな
アパートが
二人のお城

 

 

 

 

「弱虫」

 

てんとう虫
こがね虫
カブト虫
サナダ虫

自然界には
大小さまざま
個性あふれる
虫たちが生息している

みんな
たくましく
生きている

ぼくも
虫世界の末席に
加えてもらえるだろうか

一匹の
弱虫として

 

 

 

 

「健康」

 

健康は大切
けれど人はそれだけじゃない
たまには夜更かしもしたい
お酒を飲んでハメを外したい
甘いケーキを吐くほど食べたい

たとえ
健康を害しても

あのときは
めっちゃ楽しかったと
死に際に
思い出し
笑顔になれるように

 

 

 

 

 

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谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

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《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート