この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

毎月2回、月はじめと中頃に、コメントと未発表の詩を公開していきます。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

・・・・・・・

 

一人娘が家を出て、夫婦ふたりだけの新しい日常が新鮮に感じられます。

娘が使っていた部屋を自分の部屋にして、そこで詩を書く日々が始まりました。

そして7月にポエムピースから刊行する新しい詩集の準備を進めています。

タイトルは『詩を読みたくなる日』。

66才の新たな挑戦です。

 

 

 

 

「キズバン」

 

傷もないのに
ひとさし指の先っぽに
キズバン巻いて

やさしい言葉を
待っている

笑顔は
ただの
やせがまんだよと
あなたに知らせるために

 

 

 

 

「パジャマ」

 

ベランダに
光が射し
鉢植えの
青や黄や白の
小さな花たちが咲き競っている

もう
どこにも
行かなくてもいいのかもしれない
パジャマのまま
すぐそばにあるものを
ていねいに見つめること

けれど
そう思うのは
ほんの
つかのま

小さな
愛らしい
花たちのことなど
すぐに忘れて

心は
どこかを
思い始める

 

 

 

 

 

 

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谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

 

 

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《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート