詩人・谷郁雄の日々の言葉 -8-

連載
2021/03/16

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

毎月2回、月はじめと中頃に、コメントと未発表の詩を公開していきます。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

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ときどき読者の方から詩の感想を聞かせていただくことがあります。

皆さんの第一声は自分が好きな詩のことですが、それぞれ好みがちがっているのが面白い。

深読み浅読み、批判的読み、何でもありが、自由な読書だと思います。

 

 

 

「ありがとう」
    K・Tに

 

どっちが
先に死ぬか
という会話も
天気の話をするように
できる年齢になった

若い頃は
当たり前のように
これからのこと
未来の話ばかり
していたのに

いまはただ
今日という日を
大切にしたいと思う
若いぼくらが
想像さえしなかった
遠い未来の
今日という日を

長い間
ありがとうと
さりげなく
言っておきたい
いつ
不測の事態が
起きてもいいように

 

 

 

 

「明るい未来」

 

皮フ科の
盛田先生は
ぼくの足の親指の爪を
ゴリゴリ削り取り
爪のクズを熱心に
顕微鏡でのぞいている
ぼくはベッドの端に座り
顕微鏡をのぞく女先生を見ている
何が見えるのだろうと思いながら

明るい未来が
見えたらいいなと
願いながら

 

 

 

「魚武さんは言った」

 

百の決心より
たった一つの
覚悟があればいいと
魚武さんは言った

魚武さん
元気ですか?
すっかり
ごぶさたしてます

いまだに
覚悟の決まらぬ
ほくですが
さすがに
百の決心は
めんどくさくなってきた

やはり
一つの覚悟を
決める以外に
道はないのでしょう

自らの人生を
引き受けるという
気の重い仕事を
なしとげること

 

  ※ 魚武さんは、詩人の三代目魚武濱田成夫さん

 

 

 

 

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谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

 

 

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《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート

 

 

 

 

 

 

2021.03.16

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