連載|詩人・谷郁雄の日々の言葉 -6-

連載
2021/02/14

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

毎月2回、月はじめと中頃に、コメントと未発表の詩を公開していきます。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

・・・・・・・

 

 

毎朝、窓の外の柿の木にやってくるヒヨドリのカップルに「おはよう」の挨拶をするのが楽しみになっています。

彼らの目に映るぼくはどんな生き物に見えているのでしょう? 

さぞやマヌケな生き物に見えることでしょう。

花粉も飛散し、春がすぐそこまで近づいている今日この頃です。

 

 

 

「Suica」

 

Suicaに
1000円
チャージした朝

機械の口から
べろりと
突き出された
カードを受け取り

こんなカードの
どこに
千円札が
入っていったのかと
考えている自分が
かわいく思える

 

 

 

 

「ふみちゃん」

 

この世に
生きた証に
何か形にして
残しておくことは
素敵だと思うけれど

もっと
素敵なことは
誰かの思い出の中の
大切な人になって
生き続けていくこと

ぼくに
やさしく
接してくれた
いとこのふみちゃんは
何も残さなかった

不器用な
やさしさ以外は

 

 

 

「怪獣モモンガ」

 

あっ
見て見て
ムササビだよ!

あー
ほんとだ
飛んでる

かっこいいね
ムササビ

うん
でもあれ
ムササビじゃないよ

じゃあ
何?

モモンガだね

どうちがうの?

ムササビは
リスの仲間
モモンガは
怪獣の仲間

怪獣のくせに
小さいね
モモンガ

見た目は
小さいけど
でっかい夢を
追いかけてるのさ

 

 

 

「ヒーロー登場」
    ムロケンに

 

高円寺の駅頭で
ヒーローの登場を
待っていたら

向こうから
やってきたのは
いつも懐が寂しい
友達のムロケンだった

やあやあ
タニさん
久しぶり
いい天気だねえ

お金がなくても
世の荒波を
乗り越えている
ムロケンこそ

ぼくの
ほんとの
ヒーローかもしれない

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

 

 

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作者プロフィール

谷郁雄(たに いくお)

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。
大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。
90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。
93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。
詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。
詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。
いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。
また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

関連書籍

 

2021.02.14

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