連載|詩人・谷郁雄の日々の言葉 -4-

連載
2021/01/15

この連載について

日々の暮らしの中で、感じたこと、思ったこと。

詩人の谷郁雄(たに いくお)さんが、日々から生まれた詩をつづる連載です。

毎月2回、月はじめと中頃に、コメントと未発表の詩を公開していきます。

2週間にいちど、ここでお会いしましょう。

 

 

 

・・・・・・・

 

 

2021年の年明け早々、2回目の緊急事態宣言が一都三県に発出されました。

いつもの新年とは異なる重苦しいムードが日本をすっぽりと覆っています。

マスクのせいで、道行く人がみんな同じように見えて、自分がまるで顔認証ができない壊れた監視カメラになってしまったような気持ちです。

「高齢者は家にいろ」と言われても、街と人込みが好きなので、おっかなびっくり今日も外出する谷郁雄です(笑)

 

 

 

 

「リモコン」

 

リモコンで
動かして遊んだ
戦車
ロボット
怪獣

まだ小さかった
ぼくの手

いま
ぼくを
動かしているのは

妻が
巧みに操作する
見えない
リモコン

 

 

 

 

「放課後」

 

この感じは
何かに
よく似ている

放課後の
長い空白

何をしても
いいし
何もせずに
過ごしてもいい

心の影が
どこまでも
長く伸びていく

いつのまにか
校長先生よりも
年上になった

 

 

 

 

「おやゆびとひとさしゆび」

 

小さなことから
始めよう

一粒のタネを
植えたり
一本の線を
書いたり
ゴミを一つ
拾ったり

小さなことなら
いますぐに
できるはず

大きな夢を
叶えるための
最初の
小さな一歩 

おやゆびと
ひとさしゆびで
簡単に
できること

 

 

 

 

「patchwork」

 

ともすれば
ばらばらに
なりそうな日々を
一本の
丈夫な色糸で
縫いとじていく

その
糸の色や
縫い方に
人柄が表れる

いま
ぼくは
不器用な手つきで
昨日と今日を
縫い合わせ
いびつな糸の点線で
新しい一日を彩っていく
今日と明日の境目まで

一針
一針
縫うたびに
新鮮な痛みが生まれる
器用に縫えない
糸の蛇行が
いかにも
ぼくにふさわしい

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

谷郁雄さんへのメッセージや詩のご感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp (みらいパブリッシング ウェブ編集部)

 

 

 

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《 谷郁雄さん プロフィール 》

1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。また、中学校の教科書の巻頭詩にも作品が選ばれている。

 

《 谷郁雄さんの本 》

詩を読みたくなる日
小さな希望について書かれた40篇の日々のポエム

 

 

 

 

大切なことは小さな字で書いてある
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。 「詩の時間」シリーズの第1作目。

 

 

 

バナナタニ園
「楽園、ここにあります」谷郁雄の詩×吉本ばななの写真×寄藤文平の絵。ページを繰るほどに愛着がでてくる、楽園へのパスポート

 

 

 

 

 

2021.01.15

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