月曜日のショートショート【11】『吸収する雪』

連載
2020/10/26

この連載について

毎週月曜日の夜に更新される、電車ひと駅ぶんの時間で読めるショートショート。

絵本『かいじゅうガーくん』の著者でありミュージシャンでもあるマサクニさんによる不思議な世界をお届けします。

いつもの月曜日から、少しだけ別の世界へワープしてみませんか?

 

 

第11話 吸収する雪

 

 

雪の降る日は、街が静かだ。

それは、雪が〝音〟を吸収してしまっているからだと思う。

 

街から音が無くなっていく程の大雪の日。

そんな日にもかかわらず、僕は、もちろん会社に行かねばならなかった。

朝は車で行けたけども、帰りは雪が降りしきり、車を走らせることが出来なかった。

なので、同僚のスタッドレスの車で、家まで送ってもらうことになった。

 

同僚と言っても仲が良すぎて、もう友達のようである。

 

僕が車の中でテンションが上がりすぎて

「この雪が、全部、火山灰だったら世界の終わりだ。やばい!」

と意味不明なことを言っても笑ってくれる良い奴だ。

 

けれど、その同僚も可笑しな奴で、誰もいない道でスピードを出し、

「あ~滑らないかな~」と恐ろしいことを言って僕を怖がらせた。

 

 

しばらくして、僕の家に着いた。

 

同僚が

「あ~もっとマサクニさんと話しててぇな~。」

と言った。

 

僕はいつも以上に大きな声で、笑った。

そして、次の言葉を発したが、聞こえないようだった。

 

 

雪の積もった次の日。

僕は駐車場の雪かきをしていた。

 

近所の皆さんは、かっこいいスコップなどを持っていたが、

僕はチリトリしかなかったので、

他の人より、かがんで作業をしなければならなかった。

恐ろしく疲れた。

 

 

けれど、気のせいだろうか。

 

雪をかくたびに、雪から

いろんな人の声が聞こえてきた。

 

 

「今日バレンタインじゃん。チョコあげる。」

「学校にミサイル落ちてこないかなー。」

「課長ふざけんな。」

「もう別れたい。うそ。」

「俺、会社やめて不良になる。」

「だからニコラスは刑事じゃないって!」

「俺の友達のお兄ちゃんの彼女の友達が、昔、超ワルで、やばかったらしい。」

「奥さん、コラーゲンたりてます?」

「俺、昔、軽くフットサルやってたんすよ。」

「あーこの街も変わっちまったなー。」

「小林くん、あきちゃんのこと好きらしいよ。」

「やっぱりワインは赤だわ。」

「え、私も告られた。」

「日本の大統領選っていつあんの?俺まだなんだけど。」

「えっ?ジューレンジャー見てた!?俺もー!俺もー!」

「インド行きたい言ってる学生にロクな奴いませんね。教授。」

「湘南新宿ラインの籠原どまり?それじゃあ、着かないよ。」

「化粧しない方が良いって二度と言うな。ボケ!」

「俺も木村さんと、もっと話してたいぜ。」

 

あっ。

その中に、昨日車内で言った言葉が混ざっていた。

雪は肥大化し、昨夜の自意識過剰であったり芝居じみた言葉、大切な言葉を吸収していたのだ。

 

なるほど、雪かきをしている人が、何故あんなに黙々と続けられるか分かったぞ。

雪が吸収した、いろんな言葉を聞いていたのだ。

 

 

夜になった今も雪かきを黙々としている人がいる。

どうやら顏は、にやけている。

 

昨晩の

誰かの秘め事を

静かに静かに

聞いているのだ。

 

 

 

 

 

 

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作者プロフィール

マサクニ

絵本作家。ミュージシャン。
1986 年群馬県生まれ。B型。
幼稚園教諭、絵本出版社の営業を経て現在に至る。
SNSでは、絵、詩、短編小説を更新。
自身がボーカル、作詞を担当する「アオバ」では、2017 年にマクドナルドのwebCMに出演した。

Twitter
https://twitter.com/aoba_masakuni

Instagram
https://www.instagram.com/masakuni0717/

 

マサクニさんが詩と絵を担当した物語『f』の読み聞かせ動画。よろしければこちらもお楽しみください。

絵本の詳細はこちら

2020.10.26

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