この連載について
みらいパブリッシングから3冊の絵本を出している、看板作家のはやしともみさん。
彼女が考えごとをするとき、絵と言葉が同時に出てくるそうです。
そんなはやしさんの頭の中をのぞかせてもらう連載のはじまりです。
“形にならないものたち”のさまざまな表情をご覧ください。
アルバイト先の建物から外に出た瞬間にもわっと広がる湿気
雨上がりの淡い夕暮れ時
自分の生活はきっとひとつながりなのだろうけど
その時にはいつも、自分と労働者の間に放り出される塊がいる。
ふと我に帰り、仕事の余韻がにゅうと湧いてきて、その日の煮え切らない反省が大気に放出しきれぬまま、地下鉄に乗り込む。
換気が行き届いた汗にじむ車内でなお続く反省という名の余韻。
いつ私はご飯を用意する態度に向き合うのか。
夕餉を飛び越えて明日、数週間先の業務にまで視野を広げる。
さあ視野は広がっているわけではない。
ああこんな時に浮かぶのが絵と言葉である。
この時書き付けるものは、誰かに発信するものではないが何かと何かのつなぎ目をたどる線なのである。
その線が、文字になったり、形に成ったりするのである。
絵を通して言葉と出会い、生活のあわいに立って絵を見つける。
誰のためでもない落書きをしているうち、それが眼差しを持った、世にも奇妙なお友達になることもある。
奇妙なお友達については、また次回。
バックナンバー
● 記事一覧表示
作者プロフィール
はやしともみ
絵本作家・アーティスト
神奈川県生まれ。東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。
「目に見えないエネルギーを描く」ことをテーマに、絵画・陶芸・絵本制作などの創作活動を行い、お絵かきの楽しさを伝えるレッスンをしている。
座右の銘は「愛と夢とリラックス それで自我を越える」。
絵本作品に『クレヨンの旅』(東京書籍)、『もりのきでんしゃ』『もりのきでんしゃ ゆうきをもって』(みらいパブリッシング)
ウェブサイト:https://www.hayashitomomi.com
● InstagramやTwitterでも日々の創作や活動の様子を伝えています
● はやしさんの描いた絵本はこちら