月曜日のショートショート【4】 『またいつか』

連載
2020/09/07

この連載について

毎週月曜日の夜に更新される、電車ひと駅ぶんの時間で読めるショートショート。

絵本『かいじゅうガーくん』の著者でありミュージシャンでもあるマサクニさんによる不思議な世界をお届けします。

いつもの月曜日から、少しだけ別の世界へワープしてみませんか?

 

 

 

第4話

 

 

 

駅のホームでボソボソと喋ったり、ときどき笑ったりしている、
おじさんがいた。
 
通りがかりの女子高生達が
「みてみて、1人で喋ってる、ちょーウケる。」
と笑っていた。
 
 
何がウケるのか分からない。
 
おじさんの隣には、ちゃんと奥さんがいて、時空を超えてデートをしてるのに。
 
 
「最近ちゃんと食べてるの?」
 
「んん、まあね、へへへ、まあ案外、スーパーの惣菜も美味いもんだよ。」
 
「だめよ、ちゃんと作って食べないと。」
 
「へへへ、どうもね。1人分だけ作るなんてのは、しんどいから。
 
 
 時々、僕たちは知らない間に時空を超えている。
 
昨日は、曾祖父ちゃんがマスクを買う行列に並んでいるのを見たし、
公園のベンチでタバコを吸っている清少納言も見た。
 
試合途中のサッカーグランドを、「ごめんなさ〜い!」と全速力で走るノストラダムスには笑ったし、
 
病院の屋上で、ただそこに佇む初代ミッキーマウスのきぐるみを見つけたときは、
これが詩そのものなのでは?と思い、魔法の国を憂いた。
 
 
何も人だけではない。
 
花も、木も、空も、風も、
時々、昔の景色が、ひょっこり顔を出しているのだ。
僕らの感情の一切を無視して。
 
それで、
「あっ、この風、なんか子どもの頃を思いだすわ〜。」
なんて、思うけど、それは本当にあの時の風が吹いているだけなのだ。
 
 
おじさんと、奥さんの元にもいつかの風が吹いた。
 
おじさんは、懐かしいなあなんて思っていて、
奥さんは、ただそれを受容していた。
 
 
おじさんが、そっと奥さんに手を差し出す。
 
「なによ。今まで、そんなことしてこなかったくせに。」
 
感触こそなかったが、
確かにそこで、
ふたりは手を繋いでいた。
 
 

 

 

 

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作者プロフィール

マサクニ

絵本作家。ミュージシャン。
1986 年群馬県生まれ。B型。
幼稚園教諭、絵本出版社の営業を経て現在に至る。
SNSでは、絵、詩、短編小説を更新。
自身がボーカル、作詞を担当する「アオバ」では、2017 年にマクドナルドのwebCMに出演した。

Twitter
https://twitter.com/aoba_masakuni

Instagram
https://www.instagram.com/masakuni0717/

 

マサクニさんが詩と絵を担当した物語『f』の読み聞かせ動画。よろしければこちらもお楽しみください。

絵本の詳細はこちら

2020.09.07

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