月曜日のショートショート【3】 『いる町』

連載
2020/08/31

この連載について

毎週月曜日の夜に更新される、電車ひと駅ぶんの時間で読めるショートショート。

絵本『かいじゅうガーくん』の著者でありミュージシャンでもあるマサクニさんによる不思議な世界をお届けします。

いつもの月曜日から、少しだけ別の世界へワープしてみませんか?

 

 

 

 

第3話

 

 

 

この町に夕暮れはやってこない。

誰かが黒い絵の具を、あっ!とこぼしてしまったかのように突然夜がやってくるのだ。

その後、星の粉がサラサラと降り夜の完成。

だから、僕らは夕飯の支度に大忙しだ。

 

なぜか?

突然、夜がやってくるので、
突然、商店街のタイムセールが始まるからだ。

 

『神田精肉店』の親父は、
コロッケタイムセールの時には店頭に出て、
「スタートです!スタートです!スタートしております!」と町を煽る。

それ以外は店裏でスポーツ新聞を眺めている。

スタートです!の声にすべてを賭けているため、
いつもマスクをして喉のケアをおこたらない。

しかしマスクはビヨンビヨンに伸びており、
口の上辺りで筒みたいになっている。

 

『総菜屋パセリ』の肉じゃがは、
タイムセールの時だけ10円という破格の値段で売る。

タイムセールの時以外は暇で、
主人が店先でゴルフの素振りをしているか、
奥さんが二階で不倫をしているかだ。

娘のミキちゃんもエプロンをユラユラさせながら店頭に立つが、
午後5時頃空中にうじゃうじゃと発生する、
あの小さな虫の集団と、ずっと戯れている。

ある日、幼稚園児が「パセリの肉じゃがマズイマズイ」と歌っていた。

 

『橋下の魚屋』の魚は新鮮だ。

海がすぐ見えるこの町にとって、それは当たり前なのかもしれない。

しかし、この国の王様が三輪車に乗って、
店のほとんどの魚を買い占めて帰っていってしまうので、
いつもイクラしか残っていない。

仕方がないので橋下は、王様にイクラも何とか売ろうとするが、
王様は「夕日みたいだから、嫌いでちゅ」と言うばかり。

 

夕暮れに一体何があったのだろう。

僕らは自転車に乗って坂を下る。

僕が運転し、君は後ろでベンチみたいに座っている。

坂でスピードが上がり、君の右肩で僕の背中が強く押されている。

 

「来週は外食したいな。」

「無理さ。来週は整形するんだ。」

「どこを?」

「羽の部分。もう少し、整えなきゃいけない。」

「今でも充分、魅力的よ。」

「駄目なんだよ。昔、大学の友達が言ってたんだ。男は羽が命だ。って。」

「私は、男はツノが命だと思うわ。君のツノ素敵じゃない。」

「そうかな。トンガリコーンみたいだ。」

 

もうすぐ真夜中がやってくる。

君は指にトンガリコーンをはめて遊ぶのが好きだ。

「みてみて~、怪獣。」

「怪獣って。自分のことかよ。」

「私は、どうみてもペガサスでしょ。」

 

夕暮れのない町。

ずっと夜が続けば良いと願う
怪獣の住む町。

 

 

 

 

 

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作者プロフィール

マサクニ

絵本作家。ミュージシャン。
1986 年群馬県生まれ。B型。
幼稚園教諭、絵本出版社の営業を経て現在に至る。
SNSでは、絵、詩、短編小説を更新。
自身がボーカル、作詞を担当する「アオバ」では、2017 年にマクドナルドのwebCMに出演した。

Twitter
https://twitter.com/aoba_masakuni

Instagram
https://www.instagram.com/masakuni0717/

 

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2020.08.31

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