失恋書店『バイバイ北京』【3】

連載
2020/08/10

この連載について

こんにちは、みらいチャンネル編集長の笠原です。

個人的な話で申し訳ないのですが、わたしは最近、失恋したばかりです。

失恋してから、本をよく読むようになりました。

読まなくても、本のそばにいると落ち着きます。

この連載では、そんなわたしが実際に読んで、立ち直る手助けになったと感じる本を1冊ずつ紹介していきます。

 

 

 

 

今日おすすめする本

 

タイトル:『バイバイ北京』
著者:洪十六
出版:ポエムピース /2019年

 

 

この本は、失恋した直後に、生まれて初めて買った写真集です。

それまでは、写真集を買うのはおしゃれな人だけだろう、という勝手な偏見を持っていました。

でも、わたしの場合は、まるで胃が痛いから胃腸薬を買うような感覚でした。

痛みや辛さを和らげるために、この本が必要だったという感じです。

 

この本は、中国雲南省出身の写真家 洪十六さんが、大学進学を機に移り住んだ北京での5年間を写したものです。

青い正方形の本を開くと、覗き込むように盗み見るように、街の物語がはじまっていきます。

 

 

この本には、作者が北京で出会ったさまざまな人物が出てきます。

まるでいくつかの映画が平行して進んでいるようです。

ご飯を食べたり、踊ったり、恋をしたり。

彼らと友達にならないと見られないような特権的な景色を、至近距離で見つめることができます。

 

出てくる人たちが、あまりにも飾り気なく、あられもない姿だったりもするので、だんだん、わたし、ここまで見てしまっていいんだろうか…という興奮と背徳感が混ざった気持ちになってきます。

きっと作者はそうとう隠し撮りがうまいか、人を身構えさせない雰囲気を持つ人なのだと思います。

 

 

読み終わってわたしは、この写真集は動物園みたいだな、と思いました。

自分が別の生き物になって、人間ってこうやって食べたり遊んだり愛し合ったりするんだな、というのを覗かせてもらっている気分になるからです。

人間っておもしろいな。もっと生きて、人間を知って、触りたい。

そう思えたら、なんだか元気が出てきました。

 

あとがきを読むと、作者の洪さんも、本をつくった当時、失恋していたことが分かります。

失恋してから、いちど完成していたものを構成し直し、タイトルに「再見(バイバイ)」という言葉を入れたそうです。

 

この写真集は、4つのパートに分かれています。

1つ目のパートでだんだん人に近づいていき、3つ目のパートでものすごいところまで接近します。

そして、最後のパートでまた離れていきます。

写真の並べ順は、感覚的にみえて、実はすごく緻密に丁寧に、さよならのメッセージを伝えているのかもしれません。

 

 

この写真集のなかの景色に日常でも触れたいなと思って、本を立てて部屋に飾っています。

そして、気分でときどき開くページを変えています。

部屋のなかに、見たい景色に連れていってくれるどこでもドアのような窓がひとつできたみたいで楽しいです。

 

写真集を買うってこんなに楽しいことだったんだと、いい発見がありました。

映画を観ても小説を読んでもあまり気分が変わらないというときに、今度からは写真集売り場に行こう、と思っています。

 

 

 

 

・・・おまけ・・・

撮影で使わせてもらった喫茶店はこちらです。

新宿歌舞伎町の奥にあり、24時間営業です。

 

コーヒーショップ クール
Googleマップ https://goo.gl/maps/r6u33tXiRikbxWL5A

 

 

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プロフィール

 

みらいチャンネル編集長 笠原

フリーランスライター、ホテル勤務を経てみらいパブリッシングに。2020年からみらいチャンネルの初代編集長を務める。映画を観るのは苦手だけど本は好き。

笠原への励ましのお便りや、みらいチャンネルについてのご意見はこちらまで
webkikaku@miraipub.jp

 

イラスト提供:草成(くさなり)

島根県生まれ。絵本作家、イラストレーターとして活動している。
第2回絵本出版賞で2部門同時受賞を果たし、現在計3冊が発売されて人気を博している。

『植物界』大人向け絵本部門最優秀賞(ポエムピース)
『おすしときどきおに』審査員特別賞(みらいパブリッシング)
『ねことおばあさん』(みらいパブリッシング)

2020.08.10

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