詩の定期便 6

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By 笠原名々子・nanako / 2021.08.21

この連載について

「詩は生むものではなく 自分を分割する行為なのかもしれません」

15歳で詩集『童女M』を刊行し、詩人として表現活動を続ける、みちる(松崎義行)さんによる詩の連載です。

2週間にいちど、ここに詩をとどけます。

 

 

 

 

 

 

 

 

きみのところだけ

 

 

きみのところだけ
世間がない
世界がない
きみのところには
きみしかいない
きみばかりがいる

 

その
きみのところに
入っていこうというのだ
きみに交わっていこうというのだ
きみは知らん顔する?

 

きみはぼくのまえに
横たわって
目を閉じている
布をかぶって
静かに息を殺している

 

そこにぼくは
体温を加えようというのだ
温度を平均化しようというのだ
湿度を共有しようというのだ

 

きみは
声も立てずに
言葉ではない電波のようなもので
なにかとつながろうとしている

 

ぼくは
電波ではなく
線でつなごうとしている
針金で縛ろうとしている
きみは縛られまいとしているようでいて
縛られることを望んでいる

 

ぼくは
きみのところにいるきみの周囲を
まさぐる
その営みは
無駄な努力ではない
それは目的がそこにあるから
命そのものだから

 

時計の音も聞こえない
心臓の鼓動も街路樹のざわめきも
いろいろなものが行き交う音も
聞こえるものは
ただきみが黙り込む声だけ

 

きみはぼくを
必要としている
ぼくは
動きをとめない
きみのかたちを
確かなものにするために
地球を回す使命を果たすような気持ちで
きみの命が
そこにありつづけるために

 

 

 

 

 

 

 

 

旅立って行きましょう

 

 

この場から旅立って行きましょう
知らない誰かさん
もうこの場にはいられないから

 

知らない誰かさん
本当は知っている誰かさん

 

布団をたたんで
後先は考えずに
思いついたものだけ
カバンに詰めて

 

未練は置き去りに
後悔はカバンに詰めて

 

手紙やプレゼント
写真のアルバム
パソコン
CDやDVDは置き去りにして

 

この場から旅立って行きましょう
風の強い朝に
窓のカーテンは開けっ放しにして

 

 

 

 

 

 

 

 

みちるさんへのメッセージや詩の感想はこちらまでお送りください。
webkikaku@miraipub.jp

 

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《 みちる(松崎義行)さん プロフィール 》

詩、作詞、詩の選評、本の編集。
詩のデザインレーベル  oblaat(オブラート)
札幌ポエムファクトリー指導
詩のある出版社・ポエムピース株式会社
本で未来を作る? 株式会社みらいパブリッシング
2 つの出版社の 社長

1964年東京吉祥寺生まれ。15歳の時に第一詩集「童女 M-16の詩」を出版社を設立して刊行。詩の投稿雑誌「TILL」「未来創作」を創刊。またエフエム福岡、ラジオ日本、雑誌「ダ・ヴィンチ」などで詩、歌詞の選者。詩集に「NONE」「SEVEN STEPS」「バスに乗ったら遠まわり」「100万円あげる」、「10秒の詩-心の傷を治す本」「幸せは搾取されない」、ビジネスエッセイ「詩人少年、社長になる」「夢を100万回かなえる方法」(日本・韓国)。「oblaat(オブラート)」、「福島の花を広めるプロジェクト」に参加。「ここは花の島」、同名の合唱曲(谷川賢作さん作曲)、トリ音ミニアルバム「自分らしさを咲かせて」、オタクノマドとして絵本のテーマソングシリーズ「ピカ・プカ・ポン」作詞。

 

《 関連書籍 》

詩人と母
著者 田原・松崎義行
命を見つめる、日中両国の詩人による詩&エッセイの感動競作!!

 

 

 

 

10秒の詩  ─ 心の傷を治す本 ─
詩:みちる 絵:上村奈央
ロングセラー増刷出来。短い言葉が心の奥まで浸透して、傷を治します。

 

 

 

幸せは搾取されない
著者 松崎義行
詩の時間シリーズ。読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか