月曜日のショートショート 第31話『エプロンちょうちょ』

連載
2021/05/17

この連載について

毎月2回、月曜日の夜に更新される、電車ひと駅ぶんの時間で読めるショートショート。

絵本『かいじゅうガーくん』の著者でありミュージシャンでもあるマサクニさんによる不思議な世界をお届けします。

いつもの月曜日から、少しだけ別の世界へワープしてみませんか?

 

 

 

 

第31話 エプロンちょうちょ

 

 

 

「あたらしい おともだち できた?」

そうおかあさんにきかれたので、わたしは

「できたよ」

と、うそをつきました。

 

おかあさんは、だいどころでゆうしょくのじゅんびです。

 

”はる”がきらいです。

あたらしい がいっぱいです。

なんで、みきちゃん とちがうクラスになっちゃったのかな。

 

みきちゃんは「ちがうクラスになってさみしいね」っていっていたけれど、

みきちゃんは、すぐにあたらしい おともだちができるよ。

みきちゃんは、あかるくて べんきょうもできるから、すぐににんきものだよ。

かえりはどうする? いっしょにまたかえれる?

 

かえりみち、みきちゃんがちがうだれかとかえっていたら、わたしはきっとかくれちゃうよ。

でも、みきちゃんはやさしいから、わたしをみつけて、そのちがうだれかと、わたしを、ともだちにしようとするとおもいます。

きっと、しょうかいしてくれるとおもいます。

 

でもわたしはそれがいちばんいや。

 

わたしは、みきちゃんとふたりだけであそびたいとおもってしまうの。

みきちゃんも、そうおもっていたらいいなっておもうんだけど …。

 

どうだろう。

 

 

あっ。

そろそろ、おとうさんがかえってくるじかんだ。

 

おとうさんもきくかな「あたらしい おともだち できた?」って。

 

おとうさんやおかあさんにはいいことしかいわない。

うれしそうにするからね。

 

 

「まいちゃーん、お手伝いしてー」

 

おかあさんの、せなかがみえます。

エプロンのひもが、せなかでむすばれていて、あれは”ちょうちょむすび”っていうんだっけ。

 

「今日は、まいちゃんの好きなカレーだよ。運んでくださいな」

「はーい! かしこまりました!」

わたしがこのポーズをすると、おかあさんは、よくわらいます。

そのポーズから、てをなおすときに、おかあさんのエプロンにトンってふれました。

 

すると、びっくりです。

おかあさんのせなかから、ちょうちょが「ふわん」ととびました。

 

「おかあさん! みて、ちょうちょがとんでる!」

「あ! ほんとだ!」

 

おかあさんのあたまのうえを、ちょうちょが、ひらひらととんでいきます。

 

「あれは、おかあさんのエプロンから生まれた蝶々だよ。どんなところにだって行けるの」

「どんなところにも??」

「うん。どんなところにも。おじいちゃん、おばあちゃんのところにもね。ふだん家にいるお母さんの代わりに、いっぱいいろんなところに行って、いろんなものを見てきてくれるのよ」

 

どきっとしました。

いま、クラスでひとりぼっちなことが、おかあさんにばれたら、いやだなとおもったからです。

 

「じゃあ、いまのクラスの、まいちゃんのこともみてる?」

 

エプロンちょうちょが、リビングのほうへとんでいって、まどをトントンと、たたいています。

まるで、そとにでたいみたいです。

 

「見てないよ」

 

おかあさんは、わぎりにした、にんじんを、めにあてて、わらいながらいいました。

 

「見て見て、お母さん、”にんじん星人”みたいじゃない?」

おかあさんは、くちもとをうごかしてパクパクさせています。

 

「ねぇ、ちょうちょ、おそとに、でたいみたい。まどあけてあげていい??」

わたしはリビングへ、はしって、おもたいまどをゆっくりゆっくりあけました。

 

「わー、あったかい風だね〜。ベランダでビール飲みたーい」

 

ちょうちょは、そとへとんでいきました。

 

「蝶々さーん! お父さんに、帰りに、まいちゃんの牛乳買ってきてって言っておいてー! よろしくー!」

おかあさんはりょうてをふりながら、ちょうちょにいいました。

ちょうちょがいなくなって、おかあさんのエプロンはだらんとしています。

 

「ほら、ほら、まいちゃんも! 蝶々に言ってあげて!」

 

わたしは、はずかしくていえません。

 

「まいちゃんさ」

「なに、おかあさん」

 

「見られたくないことってあるよね。知って欲しくないことってあるよね。それ、全部、お母さんに言わなくて良いよ」

 

おかあさんは、にんじんを、まないたのうえにのせました。

 

「えっ、いいの」

「言いたくないことは、無理に言わなくて良いのよ。だって…まいちゃんの…ただいまの…声…聞いたら…ぜんぶ! ぜんぶ! わかりますから~!!!!」

 

おかあさんは、こんどは、なすをみみにあてて、でんわみたいにしています。

「もしもーしー! まいちゃんいますかー! まいちゃん元気にしてますかー!」

 

わたしもだいどころの、なすをひとつとって、でんわにします。

「いますよー! まいちゃんいますよー!」

 

おかあさんのこえが、なすからきこえてくるきがします。

 

「あー良かった~! まいちゃんがいてくれて良かったぁ。まいちゃんがいるだけで嬉しい! まいちゃん最高。ほら、まいちゃんも、その調子で、蝶々に言ってあげて! 牛乳買ってきてー! って言ってあげて!」

 

みきちゃんと、クラスがはなれてさみしいことを、なすのでんわで、はなそうとおもったけれど、おかあさんはわかってくれているきがしました。

 

「おとうさーん! まいちゃんの、牛乳買ってきてー!」

「おとうさーん! まいちゃんの、ぎゅうにゅーかってきてー!」

 

アパートにわたしたちのこえがひびいています。

 

「ただいまー」

「うえええ!! 早っ!」

 

おとうさんがかえってきました。

おかあさんは、ケラケラわらっています。

 

「さては、牛乳買ってきてないなー!?」

 

「おっ、やっぱりか」

おとうさんがもつスーパーのビニールぶくろには、ぎゅうにゅうがはいっていました。

 

「わあ! すごい! ぎゅうにゅう!」

「ただいまいちゃん」

おとうさんに、おかえりのギューをしました。

 

おかあさんは、また、だいどころで、ゆうしょくのじゅんびをはじめます。

 

「ベランダでビール飲もう、いえい、いえい」

と“しあわせならてをたたこう”のメロディーで、おかあさんがうたいはじめました。

 

せなかには、かわいいちょうちょが、とまっています。

 

 

 

 

 

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《 プロフィール 》

マサクニ

絵本作家。ミュージシャン。1986 年群馬県生まれ。B型。幼稚園教諭、絵本出版社の営業を経て現在に至る。SNSでは、絵、詩、短編小説を更新。自身がボーカル、作詞を担当する「アオバ」では、2017 年にマクドナルドのwebCMに出演した。

Twitter
https://twitter.com/aoba_masakuni

Instagram
https://www.instagram.com/masakuni0717

 

《 本について 》

かいじゅう ガーくん
著者 マサクニ
変人度200%!!  かいじゅう ガーくんの正体を誰も知らない。

2021.05.17

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