自分の本当の感情に忠実に生きるには? コロナや医療崩壊のはざまで思うこと。【医学博士 木ノ本景子×小説家カワカミ・ヨウコ スペシャル対談(後編)】

取材記事
2021/07/20

この記事について

小説家のカワカミ・ヨウコさんが、医学博士の木ノ本景子先生を訪ね、対話しました。

後半は、コロナからわたしたちが学ぶこと。そして、医者の視点から見る医療崩壊について。

ワイドショーではなかなか聞けない、深く切り込んだトークをお楽しみください。

前編はこちらから)

 

 

 

 

みらいパブリッシングより出版された『クスリに頼らない免疫学向上計画』。

著者の木ノ本景子さんは神経内科専門医でいらっしゃいます。

この度、私、カワカミ・ヨウコは、念願だった木ノ本先生との対談を実現しました。

神奈川県鎌倉市で自由診療のクリニックを開いている木ノ本先生。

海の見える美しい街の中にある「ヘテロクリニック」を訪ね、約2時間にわたってたっぷりお話させて頂きました。

今回は、後編をお届けします。

 

 

 

プロフィール

 

木ノ本景子(医学博士 ヘテロクリニック院長)                

神経内科専門医。内科認定医。認定産業医。医学博士。平成5年、福井医科大学(現、福井大学)医学部卒業。神経内科医として16年間、大学病院、急性期病院、回復期病棟で脳梗塞や神経難病などの診療に従事。2018年5月、鎌倉に自由診療の「ヘテロクリニック」を開設。免疫力向上、癌撲滅、認知症予防といった独自の外来を確立している。ヘテロクリニック https://hetero-clinic.com/ 

 

カワカミ・ヨウコ(小説家)

東京女子大学、ニューヨーク州立大学、サンフランシスコ州立大学でジェンダー学を学ぶ。修士号。911をアメリカで経験する。様々な人種や民族や宗派の人々とアメリカで過ごした経験から、それを小説にしたいと思うようになる。昨年コロナ禍がはじまった2020年5月、近未来小説『おもてなし2051』をみらいパブリッシングから刊行。『おもてなし2051』は、多種多様な「人種のるつぼ」になった30年後のニッポンを描いた物語。未来の東京と福島を舞台にしている。ディストピアではなく、希望ある未来を描くことに力を注ぎながら、現在は2冊目の小説を執筆中。Twitter / Instagram   

 

 

 

 

コロナは、それぞれの人の中にもともとあった気質や本質を炙り出した

 

 

カワカミ: 

最近、私がいちばん驚いたのは(物書き仲間から)「コロナはイデオロギーだ」と言われたことです。昨年2月にはじまった当初は、コロナは感染症だったはずが、いつのまにかイデオロギーに。この1年半あまりで、コロナは政治的な対立になり、そして社会の分断にまで繋がった。まるでアメリカ社会を見ているようです。

 

 

木ノ本: 

まあ、イデオロギー論争はともかく、コロナ対策をここまで実行するべきか疑問に思う気持ちは、正直、あるにはあるんですよ。

実際に感染者がいて、死亡例があり、コロナウイルスそのものへの捉え方の違いはあるにせよ、コロナによる経済的な損失はやはり大きいですよね。そして自粛によって人と接しなくなって自殺者の割合というのも増えているんです。経済的な問題と、家にいる時間が増えたことによって、家庭内暴力や虐待も増えています。

果たしてそれらはカウントされないのか? 医療崩壊を防ぐことも大事だけど、それとは別個の問題として、自殺者や虐待、経済の問題など、そちらの面は考えなくていいのか。そう思うと、とても難しい問題です。

 

 

カワカミ: 

コロナ禍のせいで失業するのは辛いことです。ただ、虐待というのは、それは個々の家庭に元からあった問題なのではないですか? コロナ禍になったから突然、虐待が起こるのではなく、コロナ禍がその家庭にもともとあった問題を浮き彫りにしたのでは?

 

 

木ノ本: 

そうです。虐待したいと思って虐待する親はいないと思います。お母さんが自分の中に処理できないものを抱えていて、それが子供に向かってしまう。ストレスが多くなればなるほど子供に向ってしまう。お母さんもストレスがいっぱいだけど、子供もいっぱいです。

 

 

カワカミ: 

私の身近にも、家の外の騒音がうるさいからという理由で、お子さんの頭を叩いてしまうお母さんがいます。深刻なことです。また、メンタルの病気を持病で抱えている友人も、悪化してしまっています。

先生とお話していて思ったのですが、コロナ禍はそれぞれの人の中に、もともとあった気質というか本質みたいなものを炙り出したのかな、と。

先ほどお話した「コロナはイデオロギーだ」と言う知人たちも、彼らの中にはきっと「俺がいちばん正しい!」といった強い自尊心がもともと存在していたのかもしれない。それがコロナ禍によって炙り出されたのかなと思います。

 

 


本企画の取材・構成を務めた小説家のカワカミ・ヨウコ

 

 

 

 

自分自身で考える姿勢。そして「弱者」とは? コロナから私たちが学ぶこと

 

 

木ノ本: 

たしかにコロナ禍は本当に色々なものを炙り出していますよね。

もともと何も問題がなかった人ならば、コロナ禍になったからといって状況は変わらないのかもしれません。コロナをイデオロギーだとする人もそうでしょうが、ワクチンを過剰に危険視したり、ワクチンに関するデマを拡散したりする人なども同様に、「自分が正しい」「他の人の意見を認めない」「これが正しくて他は絶対に間違っている」といった姿勢を根底に持っている人かもしれません。

 

 

カワカミ

今回のコロナに限らず、今後の地球ではまた新しい次のウイルスが生まれてくるだろうと言われています。だからゴールはないんですよね。そのたびに私たちはまたロックダウンをしたり、社会的なパニックに陥ったりするのでしょうか? 同じことを繰り返すほど、人間は愚かなのでしょうか? そう考えると、今回のコロナ禍から私たちは何を学ぶのでしょうか?

 

 

木ノ本: 

コロナが終息しても、コロナ禍で浮き彫りになった問題は残ります。学ぶことがあるとしたら、それはやはり自分自身で考える姿勢ですかね。

周りに振り回されるのではなく、情報を見ようと思ったら、自分から取りに行く。例えば、ワクチンの施行例も厚生労働省のホームページを見れば出ているんです。でも、それをどう解釈するかは人によるのかもしれません。

ただ、先ほどの繰り返しになりますが、自粛したせいで経済的にどれだけ損失があったのか、自殺者の問題も含めて、感染だけを見ていて本当に良いのかという問題は残ります。実際、海外では経済面を優先している国もありますし、要するに、コロナは防げたけれど餓死していいのか、という問題は残ります。

 

 

カワカミ: 

要はやはり、バランスなんですよね。経済を優先する国ほど貧しい国が多くて、コロナ死者数が多い。うがい手洗いをする清潔な水がない国では、感染を防ぐことがとても大切になります。

 

 

木ノ本: 

そういう国や地域と、日本みたいにトイレが世界一清潔な国を同じに考えるのも変かなと思います。

 

 

カワカミ: 

今回のことで、私は「弱者って何だろう?」と考えるようになったんです。

私には3歳年下の妹がいるのですが、生まれつき脳性麻痺で、車椅子ユーザーで、今は障碍者施設で暮らしているんです。私は今までずっと、うちの家族には弱者がいると自覚してきたのですが、今回のコロナ禍で、若い健康な大人が自殺したりしてしまっている。一方で、妹は施設の中で清潔にコロナ対策をしてもらって過ごしている。

今までずっと弱者だと思っていた妹が、実はそうではなかったのかも、と考えはじめると、社会的なポジションとは何なのだろうと。私の中で視点がひっくり返ったのですよね。

 

 

木ノ本: 

そうですよね。コロナ禍になって良かった点があるとすれば、社会や自分自身を見直す人が多くなったことじゃないかな。ネガティブな面ばかりにフォーカスがあたっていますが、今までの自分の中にあった視点をやぶって、より自分らしく生きるためのきっかけになり得ると思っています。

変わった社会や自分自身と、これからどう向き合っていくのか。例えば、今までは、体調が悪くても無理して仕事に行くことが善とされていたのが、コロナ禍で一転し、体調が悪かったら休まないといけなくなりました。テレワークなどをきっかけに、働き方を見直したり、健康に関心を持ったりする人も、少なからずいるはずです。

今回の私の本が、コロナ禍によって自分を見直そうとしている方々のサポートになるといいなと思っています。

 

 


ヘテロクリニックには、木ノ本先生の著書のほか、さまざまなパンフレットも置かれていました

 

 

 

 

2025年の日本に何が起こるのか。医者の視点から見る医療崩壊

 

 

カワカミ: 

そこで先生に質問なのですが、私たちはこのコロナ禍がなかったら、自分たちの本質に気づいたり、自分の視点を見直したりすることなく、今までどおり幸せに過ごせていたのでしょうか?

 

 

木ノ本: 

私は医者なので、そこはどうしても医療の側面から見てしまうのですが、もしも今回のコロナ禍がなかったとしても、日本の医療崩壊はいずれにせよ起こることだと見ています。2025年にはそうなると、前々から医師のあいだでは言われているのです。

 

 

カワカミ: 

2025年にどういう問題が来るのかをお話してもらってもいいですか?

 

 

木ノ本: 

2025年には、団塊の世代がみんな後期高齢者になるので、日本の労働人口が少なくなり、今の医療保険制度を支えるだけのお金がなくなるのです。

昔はお年寄りが安く医療を受けられていた時代もありましたが、これからはそうはいかなくなるでしょう。そういう問題も見据えて介護保険が作られたりと、対処はしてきましたが、それももう追いつかなくなっています。

これからも少子化は続くので、労働人口は増える見込みがない。なので医療費が追いつかない。2025年にそれが来ます。

「救急車はもう来なくなるのではないか」というテーマの本が、もうだいぶ前に書かれましたが、日本の医療制度の限界はずいぶん前から指摘されているのです。

 

 

カワカミ: 

そうなると日本もやがてはアメリカみたいに、救急車を呼ぶと30万円、レントゲン1枚5万円、採血1本8万円というような具合になってしまうのでしょうか?

 

 

木ノ本: 

急激にそうはならないと思いますが、実際に私が医者として勤務してきた20年のあいだにも、状況は明らかに変わってきていますね。

まず、入院日数を減らす方向性になってきています。アメリカと違って日本だと、お金が払えないからレントゲン撮影を見合わせたりする人は、これまではよほどのことがないと現れなかった。医者としては、お金のことを考えずに、必要な治療や検査ができたわけです。

いきなりそれが崩れるとは思いませんが、いつまでも今の医療保険がこれからも同じように使えるだろうと考えるのは、もはや幻想に近いです。医療現場にいる人たちでも、まだそこまで深刻に思っていませんが。

でも実際に、数字だけを見ても、どこからお金を引っ張ってくるの? といった状況ではあるのです。診療報酬改定(何をしたらどれくらい点数がもらえるかという査定)も年々厳しくなっています。

 

 

カワカミ: 

なるほど。そうなると、私たちひとりひとりが、日頃から健康を保っていく意識が必要になってくるのですね。病気になったら病院に行けばいいや、と考える時代はもう終わりに近づいている。自分の健康を病院に丸投げしないで、自分の健康は自分でケアする時代だと。『クスリに頼らない免疫力向上計画』は、未来に備えて、今のうちから覚悟をもって自分の心身の健康に責任を持つようにと、警鐘を鳴らす本でもあるわけですね。

 

 

木ノ本: 

そうです。病気になってから治すのは、お金の面でも気力や労力の面でも大変です。病気にならないことがいちばんです。そのためには免疫力を上げること。免疫力を上げるためには、ストレスケアがいちばん重要になってきますね。

 

 

カワカミ: 

先生が著書で指摘されている、「呼吸・運動・睡眠」が大切になってくるのですね。これなら自分でも簡単にできそうです。

本日はお話できて楽しかったです。本当にありがとうございました。

 

 

 

 

あとがき

 

木ノ本先生との対談は、とても有意義な時間でした。先生はもともと、相貌(そうぼう)失認(人の顔が分からなくなる脳の病気)など、脳の高次機能障害への関心から神経内科の世界に入ったと言います。今回の対談では(記事では割愛させて頂きましたが)人の最期とどう向き合うかについての話もしました。木ノ本先生の本が、2冊とも多くの読者のもとに届きますように。コロナ禍の今だからこそ、私たちの「本質」に気づくために必読の書です。

 


最後に2人で記念撮影をしました

 

 

 

 

 

(取材・文・写真:カワカミ・ヨウコ)

 

 

 

 

 

 

 

《 本について 》

クスリに頼らない 免疫力向上計画
著者 木ノ本景子
ウィズコロナの時代を生き抜くための、最強の味方は免疫力!

 

 

 

 

脳の取扱説明書
著者 木ノ本景子
脳の働きを知り、うまく使いこなして自分の望む人生を手に入れる!

 

 

おもてなし2051
著者 カワカミ・ヨウコ
近未来SF小説。 舞台は、観光立国として成功をおさめ、第一原発の廃炉作業が進む2051年の日本…

 

 

 

 

 

 

2021.07.20

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